いつもの日々

「えへへ~、せんぱぁい~」

私の名前は佐藤さとう優夏ゆうか、この酔っぱらいこと小雪ちゃんの恋人である。

私と小雪ちゃんは、一緒にお酒を飲みながら、ゆったりしていた。私はお酒にとても弱いのであまり飲まないでいたのだが、小雪ちゃんはどうやら今日はかなり機嫌がよく、ガブガブ飲んでいた。するとどうだ、立派な酔っぱらいの完成である。そう、何を隠そう、この小雪ちゃん、普段は大変おとなしい子なのだが、酔いが回るとそれはもうすごいのである。

(きっと......さっき、調子に乗って押し倒してキスしたから機嫌が良かったんだろうなぁ......。)

などと、冷静に分析していたら、

「せんぱい、せんぱい!せんぱい?せんぱぁい!」

「うんうん、出来上がってるねぇ~。先輩びっくりだよ?うん。こんなに酔ってるの久しぶりに見たよ。」

「えー.........先輩、私、かわいい?酔ってる私、かわいい?」

「うん!!そりゃあ、とても!!」

国宝だと思った。私が一人占めするのだけれど。

「えへへ~、うれしい~!すきぃー!」

「ゴフッ」

お腹に突進される。甘い香りが小雪ちゃんから漂ってくる。

(あ、いい匂い。)

同じシャンプーとリンスを使っているはずなのに、どうしてこんなにいい匂いがするのだろうか。などと考えていると。

「あ、せんぱい今、私のこといい匂いだなぁ~って思ってるでしょお?」

「え!?なんで分かったの!?」

「そりゃあ、大好きな先輩のことですもん、分かりますよぉ~!」

そうなのだ。この子、普段おとなしいし、私は仕事に就かずに、この家で専業主婦をやっているため、隠れているのだが、ヤンデレみたいな子なのである。

「ふふふ~、せんぱい、私の愛をみくびってたでしょ~?先輩の髪の毛一本、指先一本、全部、全部私のものだもん。」

と、自慢気に言う様子は、ヤンデレと言うには、可愛らしかった。

「ああ、本当に、愛しいなぁ......。」

と、思わず声に出してしまった。

「......せんぱい、かわいい。その顔、好き。」

と言いながら、私の腕をぎゅーっとしていた。

「ふふ、あ、そういえば、すっかり忘れてたけど、さっき私がトイレに行ってから、ずっと映画止めっぱなしだったけど、続き、見る?」

「うん!見るー!」

そうして、映画を再び一緒に見るのだった。



ー数分後ー


「きゃぁぁぁあ!!!先輩、怖い、おばけ、こわい、おばけ、無理、怖い。恐怖!」

「恐怖!って......くくっ......。」

変な反応をするから、思わず笑ってしまった。今見ている映画はホラー映画である。小雪ちゃんは、ホラー映画が苦手なのに、ついつい見たくなってしまうようで、たまにこうやって見るのだが、酔いが回っているのもあってか、いつもよりもリアクションが大きい。ちなみに私はホラー耐性がかなりあるので、全然平気である。

「せんぱぁい......怖くなっちゃったので、今日は一緒にぎゅーしながら寝てください。」

「それって、いつも通りじゃない?」

「まぁ、そうですけど!いつもよりも強く、ぎゅーってしてください。」

と、少し涙目で、言われる。こんなに可愛い顔で、断れる人間がいるだろうか。否、いるはずがない。ああ、かわいい、かわいすぎる。

「ふふ、喜んで。」

そうして、手を繋ぎながら、時々ぎゅーっと抱き合いながら、映画を楽しんで、お酒を楽しんで、二人の時間を、いつもの時間を、二人で一緒に楽しむのであった。

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