紅い鬼の独白――赤鬼※

 馬鹿みたい。本当に馬鹿みたい。生きたくても、生きれないひとがいるのに、自ら命を絶つなんて命を冒涜するのもいい加減にしてよ。

 生きたかった者たちの想いを背負って生まれるのに、そんなこともスッキリ忘れて、何様のつもりなの。

 死にたいと、そう望むのは構わない。そう思う事で生きる事が出来る時もあるだろう。

 でも命を絶つことは赦されない。赦せない!

 生きていられることがどれだけ幸せなのか忘れた奴らへ、罰を。

 死ねて嬉しいのだと、笑顔で命を絶つ者たちを見ると本当に虫唾が走る。

 辛いのは周囲のせいだと決めつけて、自分が変わろうとしなかっただけじゃないのか?

 生前どれだけ努力しようと、死んだらそこで終わり。何故命の尊さに気付けないの。


 私は生きたかった、もっと、もっと! 生を渇望して、毎日、一日でも長く生きていられるように、努力した。

 母も父も病弱だった私を捨てた。それでも私は生きるために毎日を精一杯生きた。拾われて、凌辱されても、私は生を望んだ。辛くても、前を見て、生きた。

 それなのに、何故? 何故あんなに若くして私は死ななければいけなかった? 生きたかったのに、死にたくなんてなかったのに。

 私は生きたくても生きられなかったのに、生きられる環境にある奴らが、何人も自ら望んで命をドブに捨てる。毎日、毎日毎日毎日毎日毎日!

 生きたいのだと醜く生にしがみついていた私を嘲笑うように、命を投げ捨てる。

 そんなに死にたいのならせいぜい最後に足掻いて見せたらどうなの。実際に命を絶つ前に、何故行動を起こそうと思えなかったの?

 赦せない、ユルセナイ。私の望んだものを、あっさりと捨てる彼らが! 彼女たちが!

 だから私は今日も罰を下す。自らの命を絶って安寧を得ようとする者に、罰を。



――

―――

こちらは自殺者にひどい恨みを持つ赤い鬼の話。

八つ当たりなんですけどねえ。

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