月美咲亭

龍牙side

「神宮さん?申し訳ないんだけど、その」


電話の後ろでガラスか何かが割れる音がする。ふざけんな!という怒声も聞こえる。


「……店で暴れてる迷惑なお客さんが居て、ずっと収集がつかないし、それで連絡したんだけど……忙しいわよね?ごめんなさいね。頼めるかしら?」


[月美咲亭]という店の若女将から店で暴れている客がいるからどうにかしてほしいという電話が入った。


「はぁ」


傍迷惑な客がいたもんだな。


「チッ。分かった。すぐ行く」


と先程仕事も終わらせた所で帰って休もうとしていた。が、その客に生憎邪魔された訳だ。

こっちは3日徹夜で仕事をしていた。

仕方なく部下に車を用意させる。

ハァともう一度ため息をつくと座っていた自分専用の椅子から立ち上がり、待機していた他の部下にスーツの上着を着せてもらいビルの32階から1階までエレベーターで降りていく。

チン!と今の雰囲気とは場違いな音が1階に着いたことを知らせる。

ホールを歩けば部下が頭を下げていく。


「いってらっしゃいやせ」


車に乗り込むと自分専用の運転手、橘が今回の目的地へ車を走らせた。

足を組み窓に肘をつく。舌打ちをしてもう何度目か分からないため息をつくと窓の外へ目を見やる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る