Chapter 30
その後、S子との再会を果たし、一世一代の告白をして無事付き合う事になったものの、告白するまでに時間が掛かった事もあり、既に一ヶ月が過ぎようとしていた頃に、彼女にその事を報告しようと、金曜の夜に電話を掛ける。
が・・・電話は繋がらなかった・・・
嫌な予感がして、すぐ姉上から車を借り、夜中に彼女のマンションまで急いで車を走らせる。
けれど、彼女の部屋は真っ暗になっていて、カーテンも取り外されており、もちろんインターホンにも誰も出ない・・・
それが何を意味するのかは、もう解っていたけれど、
翌日、マンションの壁に貼ってあったマンションの管理会社に問い合わせたら、2週間くらい前に引越して、移転先については教えられないと断られた。
実家の連絡先とかも、まさか連絡する事になるとは思ってもいなかったので、彼女から聞いてなんていない。
そしてスタジオにも連絡はしてみたけれど、やっぱり同じくらいの時期に辞めたとの事だった・・・
そう、あの時の電話を最後に、彼女は自分の前から忽然と姿を消してしまった・・・
二人で決めた恋愛ルール・・・その1は二人共なかなか守る事が出来ないままズルズルと行ってしまったけれど、
彼女は、ルールその2とその4を確実に守ったのだ・・・
自分の前にS子という存在が現れた事で、きっと彼女自身も踏ん切りがついたという事なのだろう・・・
いや、むしろ踏ん切りをつけたかったからこそ、S子への告白の後押しをしてくれたのかも知れないし、別れてから少し落ち込み気味だった自分の事をずっと気にしてくれていただけに、これで、心置きなく別れられると思ったのだろうとも思う。
いずれにしても、もう話をすることも連絡を取る事すら叶わなくなり、これで彼女との縁は完全に切れてしまった。
最後の電話で泣いていたのは・・・
つまり、あの電話でもう終わりにしようと決めたからだったのか・・・
こんな風に消えるなんて、最後までカッコつけすぎだって!
サヨナラも何も言わず、一人で勝手に終わりを決めるなんて、そんなのズルイって!
涙が出そうになるのを堪えながら、心の中で何度もそんな事を叫んでいた。
もしかして、引越ししてから連絡が来るかも知れないと、淡い期待もしていたけれど、結局その電話も来る事は無かった・・・
一度心に決めた事は絶対に守る・・・それが彼女なのだ。
もはや彼女が自分の前に姿を現わす事は、二度と無いだろう・・・
失ってから気が付く・・・
彼女がどれだけ自分の事を愛していてくれていたのかを・・・
自分にとって彼女がどれだけ大切な存在だったのかを・・・
でも、一度失った物が元に戻って来る事は、もう無いのだ・・・
もしあの時、S子から連絡があった事を相談しなければ、こんな終わり方にはならなかったかも知れない。
ただ、早かれ遅かれ、どこかで決別しなければならなかった事だけは確かだったのだから、変に引き摺り過ぎずに終われたのは、それはそれできっと良かったという事なんだろう・・・
そして、その後の自分は、彼女に対して区切りを付ける事になったと同時に、長年想いを馳せたS子との恋愛が始まった事でS子の事ばかり考えるようになっていた事もあり、彼女との事は徐々に過去のいい思い出に変わって行ってしまった・・・・・
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