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來斗さんは、何も言ってこなかった。


「あの、私そろそろ帰りますね。助けてくださって、ありがとうございました」


「帰るって、行くとこないだろ」


「今日はネカフェに泊まります。明日からはホテルに泊まりながら、新しい家を探します。少しの間生活していける、お金はあるので」


「女一人でネカフェは危ないだろ。ここに泊まればいい」


泊まればいい?


ここに?


「いや、それは悪いです」


「もう遅いし、今日は泊まっていけ」


「悪いですって。それに、ここってどこですか?」


聞くの忘れてた。


廊下にいくつかドアがあったので、他にも住んでる人がいると思うけど、家っぽくはない。


マンションやハイツでも、なさそうだし。


「ここは、倉庫だ。で、今いるのが俺の部屋」


倉庫?


倉庫にしては、綺麗な気もする。


て、俺の部屋?


ここが?


「それだったら、なおさら悪いです!私、帰ります!」


私は立ち上がって部屋を出ようとしたけど、來斗さんに腕を掴まれた。


「いいって言ってんだろ。病みあがりだし。今日は泊まっていけ」


「でも…」


「決まりな」


少し強引ではあったが、今日はここに泊めて貰う事にした。


「今、何歳だ?」


「16です。高二です」


「俺と同い歳か。じゃあ敬語なしな。名前もさん付けじゃなく、呼びすてでいい」


お、同い歳!?


全然見えない…。


大人ぽかったから、20歳ぐらいと思ってた。


「学校はどうするんだ?あの制服って、あの有名な名門私立だろ?」


「卒業までの学費は払ってくれるみたいなので、通います」


「敬語」


あ。


だって、まだ2回目だし会うの。


さっきまで、名前も年齢も分からなかったし。


「そろそろ寝るか?」


部屋にある時計をみると、23時前だった。


「美桜はベット使え。俺は、ソファーで寝るから」


「え、それはダメです!私、ソファーで寝るから!」


「いいから、ベット使え」


と言って、來斗はソファーに寝転んだ。


「すみません。ありがとうございます」


「敬語直せよ(笑)おやすみ」


「おやすみ」


ベットに寝転んだ。


今頃、何してるんだろう。


私が出ていったこと、喜んでるんのかな?


きっと、喜んでるんよね。


これで邪魔者いなくなったんだから。


ダメ、また泣きそうになってきた。


今日何回泣くんだろ。


口元を抑えて、頑張って声をころした。


「また、泣いてるのか?」


私は來斗に聞こえないように、泣いたつもりだったけど、聞こえてたみたい。


「ご、ごめんね。寝る邪魔しちゃって」


「気にするな」


そう言って來斗は、手を握ってきた。


「え、あ、あの」


「落ち着くまで、握っててやる。ほら、寝ろ」


手を握ってくれらからか、落ち着いて気がつけば私は寝ていた。

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