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あれから1週間が経った。


一日おきで雨が降っている。


今日も朝から雨。


6月中旬で梅雨真っ最中。


早く梅雨あけてくれないかなー。


ブーブー…


ポケットの中に入れてた携帯が鳴った。


普段鳴らないから、珍しい。


メールが届いてた。


差出人は、お父さんからだった。


授業中だったけど、気になって開いた。


【今日は、真っ直ぐ帰ってきなさい】


いきなり何?


普段連絡なんかくれないくせに。


けど、心のどこかで嬉しい私がいた。


もしかしたら、って少し期待する私がいた。


私はこの日、早く学校終わらないかなと思った。


今日は16時までだった。


学校が終わり、急いで帰った。


「帰ったのか。リビングに来なさい」


玄関のドアを開けると、お父さんが立っていた。


私は後ろを歩いてリビングに行くと、お母さんが椅子に座っていた。


お母さんの横にお父さんが座り、私は向かい側に座った。


「単刀直入に言う。家から出ていきなさい」


お父さんの言葉が、直ぐに理解出来なかった。


今、なんて…?


家を、出ていきなさい?


「ど…して…?」


私は震える声で言った。


「どうして?私たちには美羽と大吾だけでいいの。美羽のが断然可愛い。だけど、あなたは違う。だからパーティーとかにださないのよ」


お母さんからの言葉が、胸を痛めた。


「それに、援交してるんですって?」


「ちがっ!アレは、美羽が…!」


「美羽がそんなことするはずないでしょ!?美羽から聞いたんだから!美羽にそんな嘘を擦り付けるなんて!!」


私が言っても、信じてくれない。


私の事を、名前で呼んでくれない。


「全く、天原財閥の恥だ。いいか、荷物をまとめて今すぐでていけ。当面の生活費はもう振りこんである。学校は卒業までは面倒見る。」


これ以上何を言っても無駄なんだろう。


私は何も言わず、家を飛び出した。


気付けば、この間の橋にいた。


傘もさしてこなかったので、全身びしょ濡れ。


期待した私がバカだった。


もしかしたら、これからは一緒に出かけたり、ご飯食べれたりするのかなって思ったのに。


「大吾と美羽だけ」


お母さんの言葉が、一番痛かった。


私の存在は、もう無いんだ。


今までは家に帰る場所もあったのに、本当になくなった。


本当に孤独になったんだ。


だったらもう…


私は橋の手すりに座った。


死んでもいいよね?


この川って、どこに続いてるんだろう。


どこら辺で、見つかるのかな?


私を引き取る人なんていないから、見つけないで欲しいな。


16年間の人生を終えよう。


私は手を離し、飛び込もうとした時だった。


「今度は、本気で死ぬ気だな」


腕を掴まれた。


そこには、この前の男の人がいた。


「離して下さい」


「前も言っただろ。たとえ他人でも目の前で死なれると、悲しいって」


「だったら、どこか行ってください」


「目の前で死のうとしてるやつを、ほっとけるか」


どうして?


ほっといてくれたらいいのに。


悲しいなら、見なきゃいいのに。


「とりあえず、そこからおりろ」


私は言われた通り降りた。


立とうとした時だった。


視界がボヤけていった。


「あ、おいっ」


私の記憶は、そこで途絶えた。

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