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んっ…


あれ、寝てしまったんだ。


制服しわくちゃになってるし。


時計を見ると18時を過ぎていた。


あ、雨降って来たんだ。


外から雨の音が聞こえる。


「ただいまー」


下から美羽の声が聞こえた。


帰ってきたみたいだ。


私は制服から着替えて、出かける準備を始めた。


リビングから


「パパ、ママありがとう!いっぱい買ってくれて!」


と、聞こえた。


リビングのドアが開いてたので、横目で見ると大量の紙袋が机の上に置かれてた。


私には買ってくれないのに。


月に一度、家政婦さん経由でお小遣いが渡される。


それも数十万。


これで生活しろってことだと思う。


お金なんかいらないのに。


ただ、普通の家族みたいに一緒に出かけたり、他愛もない話をしたい。


まぁ、無理だと思うけど。


私は傘をさして、家を出た。


お腹も空いてないので、適当に歩いた。


どれぐらい歩いただろう。


多分30分ぐらいかな。


私は川が流れる橋の上で、立ち止まった。


人通りはあまりない。


私しかいないし。


家を出た時より、雨は強まっていた。


私が死んだら、誰か悲しむかな?


悲しむ人なんかいるのかな?


誰からも必要とされてない私。


家にも学校にも、居場所のない私。


愛されてない私。


誰も悲しまないよね。


逆に喜ばれそう。


家族も私の存在が本当にいなくなって、学校でもいなくなって。


みんな、喜ぶかな?


「フフっ」


自分で思って、笑えてきた。


孤独だなー。


それだったら、いっそうのこと…


「死ぬのか?」


「え?」


心の中で、死のうかなと思った時、声を掛けられた。


声がした方をむくと、長身の男が一人たっていた。


誰?


傘で顔は見えない。


「なんか、死にたそうな顔してたから」


あ、顔見えた。


金髪に切れ長の一重。


多分今まで見てきた男の中で、一番顔が整ってると思う。


身長も180cmぐらいありそう。


私が160cmしかないから、とても大きく見える。


死にたそうな顔をしていた?


私が?


まぁ、死のうかなとは思っていたけど。


なんで、この人は分かったんだろう。


「誰からも必要とされていない。私の居場所はどこにもない。誰も私が死んでも悲しまない」


「だから死のうかなって?」


私は頷いた。


この人に、なんでそんなことを言ったかわからない。


自然と喋っていた。


「誰も悲しまないって言ってるけど、少なくとも俺は、他人であろうとも目の前で死なられると悲しいぞ」


悲しい?


私が死ぬと?


数分前に会った、他人なのに?


「おーい!まだかー!?」


少し離れてるとこに停まってある車から、誰かが叫んだ。


この人の友達だろうか?


「じゃあな」


男の人はその車に乗っていった。


変わった人だったな。


いきなり話しかけてきて。

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