第52話

橘内さんと、奥様の蟠りがなくなって、本当に良かった。一央さんとも、親子の名乗りが出来て良かった。


「みんなで、幸せになろう」って一樹さん。

頷くと、『私も入ってるのか⁉』って、一樹さんのお父さんの声が‼

まだ、電話が繋がってて、びっくりしたのはいうまでもない。


無事、記者会見が終了し、記者の皆さんがお帰りになり、僕たちも、一央さんと、奥様にご挨拶して、帰途についた。

一樹さん、緊張の糸が切れたみたい。

車に乗り込むなり、ごろんと僕の膝の上に横になり、頬をスリスリしたりして、甘えん坊さんモードに。


「一樹さん、くすぐったいから」


身を捩ると、今度は、服の中に、顔を突っ込んできて・・・誰かさんとそっくり。


「一樹さん‼」


さっきの凛々しかった姿はすでに、幻と化した。助手席に座る橘内さんも、かなり呆れていた。



一樹さんや、海斗、おじさん、おばさん、芳樹さん、橘内さん、鏡さん、福光さん、奥様ーーみなさんに守られいるからこそ、今、こうして生きてられる。

だから、僕は、のぞみちゃんを守り、一樹さんと海斗と共に、生きていく。

それが、お世話になったみなさんへの、僕なりの恩返しになればいい。


「一樹さん、ごめんなさい」


「何⁉何⁉」


彼、びっくりして、顔をひょこっと出してきた。朝、苦労してセットした髪がぐしゃぐしゃ。でも、このだらしなさが、彼らしくて、かわいい。


「・・・ますます好きになったかも・・・」


「惚れ直した⁉」


気恥ずかしくて、俯いたまま、小さく頷くと、彼、嬉しそうに、顔を上げてキスをしてくれた。


「・・・帰ったら、すぐナオを抱きたい。いい⁉」


甘い彼の囁きに、身も心も、メロメロに溶けていく。橘内さんや、運転手さんが、目のやり場に困るほど、僕達は、互いの指を絡め、何度も、何度も口付けを交わした。

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