第51話
記者会見はその後も続き、一央さんが、最後に一言述べて、それで、締め括る予定になっていたみたい。マイクを片手に、いざ‼というとき、タイミングを見計らった様に携帯の着信音が鳴り響いた。
静かだった場内は、また、ガヤガヤし始まって・・・。
一央さんのでも、一樹さんのでも、橘内さんのでもない。
記者の皆さんでもない。
音の鳴っている方に自然と視線が集まりだして、やがて、司会をされていた一央さんの秘書の方に皆が目を向けた。
「すみません」平謝りしながら、一旦、切ろうと、画面に目をやるなり、驚いて、慌てて、一央さんに手渡した。
一央さんは、耳にあてて、一言、二言、会話を交わした後、マイクをあてた。
『槙芳樹です』
電話を描けてきたのは、一樹さんのお父さんだった。この場に居合わせた皆さん、一様にびっくりしていた。
勿論、一樹さんも、僕も。
だって、全然聞いてなかったから。
まさに、サプライズ。
『息子たちのプライベートな件で、皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ありません。長男の一樹、次男の翔、そして、一樹に嫁として来てくれたナオーーそこにいます三人は、私の大切な家族であります。特にナオは、辛い境遇の生い立ちにも関わらず、生来の明るさ、優しさで、皆を元気にしてくれる。今や、彼のーー嫁の存在が、私の生き甲斐になってるといっても過言ではない。またまだ青二才の息子たちを、これからも、温かく見守って頂きますようお願い申し上げます』
一樹さんのお父さんの言葉に、嬉しさのあまり、涙腺が崩壊寸前だったのに、橘内さんが、ハンカチを渡すものだから・・・。
こんな大勢の前で泣くことになってしまった。
しかも、一央さんが、これからは、僕と一樹さんと橘内さんの後見人となることと、上京した際は、父親代わりになると仰ってくれて。
奥様も、息子が三人も増えて嬉しいわ、と手放しで喜んで下さり、気が付けば、僕のもらい涙で、記者の皆さん涙ぐんでいた。
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