第27話

「たく、目を離すと、これなんだから」


ふわりと体が宙に浮いて、気付けば一樹さんに抱っこされていた。


「か、一樹さん!」


これはこれで、恥ずかしい。


「ナオは、俺と海斗の‼」


「少しくらい、触らせてくれたって」


「駄目なものは駄目です」


親子で同じこと言ってる。

一樹さんのご家族って、本当、面白い人達ばかり。


「早織さんは、うちになかなか馴染めず、疎外感を抱いたのかもな。生い立ちを正直に話してくれれば、それなりに、配慮したのに。まぁ、今となっては、遅いが・・・ナオは、どうだ⁉槙の嫁として、やっていけそうか⁉」


「あっ、は、はい!頑張ります!」


手を上げて、返事してから、かなり後悔した。

あっ、そうだ、ちゃんと、敬語使わないと‼


「頑張らせて頂きます」


今にも消えそうな声で。

ほんと、恥ずかしい。


ハ、ハ、ハ!!!


一樹さんのお父さんが、また、豪快に笑いだした。


「ナオは本当に面白い子だな。お陰で長生き出来そうだ」


「はぁ、長生きしなくていい」


憮然として、一樹さんが一言。


「せいぜい、ナオを私に取られないように頑張れ」


やはり、一樹さんのお父さんの方が一枚上手。

一樹さん、頭を抱えてた。


遅れて、海斗も合流し、一樹さんに、目で訴える。


(俺も抱っこしたい)


僕、赤ちゃんじゃないから‼


必死で、降ろして、とアピールするも、今度は、海斗に抱っこされ、外が見える場所へ移動した。


「ペットボトル、落ちそう」


「じゃあ、降りる⁉」


「うん」


ソファーに、僕の事、そっと、下ろしてくれて、その時、何気に目があってーー。

何を思ったのか、額に軽く、キスをしてくれた。


「ごめん、やきもち焼いた。みんな、ナオばっかりで」


「ごめんなさい」


謝ると、海斗にようやく笑顔が戻ったけど、今度は、顔色を変えた、一樹さんが飛んできて、ぶちゅーーと、跡が残るくらい強く、頬っぺたにキスをされた。


「二人とも、場所を考えて。一樹さんのお父さんだって見てるんだし」


怒っても、仕方ないのは分かってるけど。


「いやぁ、仲がいいな。羨ましいよ。私も、混ぜて貰おうかな⁉」


「父さん!」


一樹さん、ますます頭を抱えてた。


ほんと、面白い親子。



長居すると、一樹さんの頭に、角が生えそうで、早々に、挨拶して病室を後にした。

奈緒さんが、見送ってくれて、その時、一樹さんのお父さんが、もう、そんなに長くは生きられないと教えて貰った。


「恥ずかしのよ、実の親子だからこそ。だから、あまり見舞いに来ないの。ナオ、一樹の代わりに、顔を出してあげてよ」


「はい」


「駄目、セクハラされるだけ」


「あのね、一樹」


奈緒さん、肩で大きく溜め息ついていた。


「一樹さんのお嫁さんとして、そこは、ちゃんと孝行したい。勿論、海斗のお嫁さんとしても、おじさんたちに孝行したい。それなら、いい⁉」


「ナオが、それでいいなら」


二人とも、ようやく納得してくれた。

良かった。丸く、納まって。

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