第26話

「なぜ、君達の関係を、私が認めたと思う⁉」


言われてみれば確かに。


「新人議員が、同性愛者で、恋人が、元妻の実の弟。略奪愛だの、未成年者との爛れた関係だのと、マスコミが喜んで飛び付いてもおかしくないのに。私と君は、前に一度会ってるんだ。多分、覚えてないだろうが」


「え⁉」


やっぱり、どこかで、会ったことがあるんだ。全然覚えてないけれど。


「一年位前、自宅の前で、喘息の発作を起こした、黄緑色のジャージ姿のおじさんを、助けた記憶はないかな⁉」


黄緑色の!?

おじさん⁉

発作!?


あっ、まさか‼

そうだ、思い出した。丁度一年前だ。開店準備をしていた時に、うずくまって苦しんでいた男性を見つけて、声を掛けたんだ。

すぐに、救急車を呼んだけど、なかなか来なくて、来るまでずっと、背中を擦ってたんだっけ。


「あの時の!?」


「そう、スーツ姿なら、代議士の槙だって、誰かしら気が付くと思ったが・・・ジャージ姿では、意外と気が付かないもんだ。みんな素通りして、誰も助けてくれなかった。でも、君が助けてくれた。お陰で、今こうしていれる。その後、直ぐに君の事を調べさせた。まさか、早織さんの弟だったとは。不思議な縁を感じたよ。運命の巡り合わせとはまさにこの事だったんだ、そう思った。だから、一樹から君と付き合うって聞かされた時は反対はしなかった。早織さんの面倒をみるのも、君への恩返しだよ」


「槙さん・・・」


「本当は、槙の家に嫁に来て欲しかった。君に、お父さんと呼んで欲しかったが、あんないい養父母が側にいるんだ。君は幸せものだな羨ましいくらいだ」


そんなに誉めないで欲しい。恥ずかしいから。


「でも、やっぱり、お父さんって呼んでほしい」


手を握り締められ、ぶんぶんと大きく振られ、戸惑いつつも、頷くと嬉しそうに笑ってくれた。


「試しに呼んでみてくれるか?」


「今、ここでですか!?」


「そう」


引くにもひけず。


「お、お父さん・・・」


すっごく、恥ずかしい。


「ナオ、うちのバカ息子を宜しく頼む。甘ったれの青二才で、まだ、子供で。手が掛かると思うが、面倒をみてやってくれ」


一樹さんのお父さんも、おじさんと同じ事を言ってる気がする。


なんか、笑えるくらい似てる。


「はい、お父さん」


笑顔で返すと、むぎゅーーと、誰かさんみたいにハグされた。


「やっぱり、一樹には、もったいない‼」


って、それまさかの本心⁉

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