第28話

「初登庁は、三日後だったな」


「そうです」


「福光派に入るのか⁉」


「福光さんは、父の戦友ですし」


「福光は狸爺と専らの噂大丈夫か⁉」


皆木家の食卓に一樹さんが加わり、おじさんと政治の話しに花が咲いている。


二人の会話に、僕も、海斗も、全く付いていけない。


「親父の、生き生きとした顔見んの、久しぶりかもな」


「そうなんだ」


一樹さんのお父さんのお見舞いの翌日。おじさんの提案で、一樹さん、うちに引っ越す事になった。その日のうちに、自宅を引き払い、夜には、ごく普通に、家族の一員として、何ら違和感なく溶け込んでいた。


ーー流石だ


本日の夕食は、一樹さんリクエストの、オムライス。

おじさんと、会話しながら、目下、チキンライスに入っているピーマンとにんじんと格闘中。


「一樹さん、大丈夫⁉」


「う゛~ん」


かなり、苦しんでる

ご近所の農家さんが、差し入れとして、山のような、にんじんと、ピーマン、たまねぎを置いていってくれて。いつもの倍、オムライスに入れたけど、やっぱ、入れすぎたかな⁉


ーーごめんなさい


「ナオのご飯、おいしい‼」


「顔、ひきつってるよ」


海斗も、呆れてる。


「一樹、大体、取ったから、俺の食べていいよ」


自分の皿と交換した。

いつもの間に、取り除いたのか、小皿にこんもりと、にんじんとピーマンが乗ってた。


「でもさぁ、農業団体が全面的に支持してくれたんでしょ。視察とかあった時どうするの⁉


ーーうん、確かに


「う~ん」


一樹さん、頭を抱えてしまった。



ちょうど、その時。

橘内さんが、現れた。

顔が険しいから、かなり、ご機嫌斜めかも。


「一樹さん、例の件、ナオさんにお話しされたんですか⁉」


「ん⁉例の件って⁉」


「公設秘書の職を今すぐ辞めても⁉」


大きな溜め息と共に、橘内さん。目が怖い。間違いなく、怒ってる。


「俺、カガミ苦手~。謝るから、もう一回教えて」


「カガミさんって⁉」


初めて耳にする名前だ。


「鏡家は、代々、豪商だった槙家の大番頭を務めてまして、戦後、政治家に転向した槙家に、公設秘書として仕える様になりました。現当主の、礼氏は、一樹さんと同い年ながら、先代の公設秘書を務めてまして、今回、政策秘書として、一樹さんに仕える事になったんですが、はっきりいって、鏡の方が、政治家に向いているかもしれません」


橘内さん、相変わらず手厳しい。

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