第4話

海斗が、ぎりぎりまで離してくれなくて。

タクシーが迎えにきて、ようやく、諦めがついたのか渋々ながらも、見送ってくれた。


家から、車で、三十分くらい。

小、中学校が隣接する文教地区の一角。幹線道路沿いの真新しい三階建のマンションの前でタクシーが停まった。

下りると橘内さんが待っていてくれた。


「一樹さん、結婚するまで、実家暮らしで、みんなやって貰っていたので、早織さんがいなくなり、掃除、洗濯、片付け何一つ出来なくて・・・大体、想像出来ると思いますが、かなり大変なことになってます。貴方が、家庭的な方で良かった」


つまり、相当、散らかってるって事⁉

だから、泊まるって話しになって、焦ったんだ。


「早織さんも、実は、何一つ出来なくて、家の手伝いを全くしてこなかったのでしょう。内緒で、家政婦を雇っていたくらいですから。それと、一樹さん、外で見せる顔と、プライベートの顔、180℃違いますから」


どういう事なのか、全然、分からなくて。

首を傾げてると、行きますよ、そう言われて、慌てて、橘内さんの後を追った。

覚悟して、玄関のドアを開けると、


あれ、普通!?


こじんまりとしてて。

でも、リビングダイニングキッチンに案内された時、あまりの惨状に絶句した。服はあちこちに脱ぎっぱなし、コンビニのお弁当も食べっぱなし、缶のビールの空き缶もあちこちに転がって、ゴミだらけになっていた。足の踏み場もないとは、まさにこの事で。


「槙さんは⁉」


橘内さんに聞くと、ソファーを指差した。


「あまり、寝れないみたいで、休みの時や、時間があるときは、横になっているのが多いんです。びっくりしたでしょう⁉」


「あっ、はい」


大きい体を器用に丸くして眠る槙さん。その寝顔は子供のようにあどけなて。


も、も、も、何か、ほっとけない。


性格直しとけば良かったと、後悔したのも後の祭で。なぜか、母性本能を擽られしまった。


取り敢えず、片付けよう!


この状態なら、他の部屋も、散々たるものだろう。お風呂と、一樹さんの部屋を片付ければ、最低限、生活できるはず。

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