第80話
「何か凄い展開になってきたかも。これは本当に大変だわ。確かに好きな人がいるのに、他の人の元へ嫁がされるなんて、私でも嫌だけど……」
だが皇女ならそれも仕方ない部分はある。稚沙自身も、もし
「そういう意味で考えるなら、まだ自分の方が自由があるのかも?
多分うちの親も、私が嫌がるような相手の元には、さすがに嫁がせたりはしないだろうし」
彼女の親は日ごろ政に関わることがないので、権力云々を気にすることは余りない。なので、彼女の嫁ぎ先に対しても、ある程度は本人の希望を聞いてくれるだろう。
「まぁ、嫁ぎ先なんて当分は関係ないかな。でも
そんなことを考えてた時である。
「稚沙、お前また何を1人でぶつぶつといってるんだ?」
稚沙は急に声を掛けられて、思わず後ろを振り向いた。
そこに立っていたのは、
(どうして椋毘登って、いつもこうややこしい時に現れるの……)
「あ、椋毘登も来ていたのね」
「俺もって、他にも誰か来てるのか?」
(先ほど聞いた話は下手に他人に知られる訳にはいかない。ここは上手く誤魔化しておかないと)
「あ、ごめんなさい。今日はこの宮に訪問者が来られていたようで、私も詳しくは知らないのよ」
そういって彼女は椋毘登の元に歩み寄っていった。そしていつもよりも愛想良くして彼に話しかけた。
「ところで、椋毘登も誰かに何か用事?私で良ければ一緒に探すけど?」
いつもの彼なら、呆れ顔をしてそのまま立ち去るかと彼女は思ったのだが、今日はどういう訳か、いつもと少し様子が違っていた。
「あぁ、ちょっと
彼は少し照れたような感じで、彼女にそう答えた。
(うん、何かちょっとおどおどした感じがするけど?まぁ、この際気にしないでおこう)
「分かったわ、椋毘登。じゃあ一緒に行きましょう」
こうして2人は、一緒に庁へと向かうことにした。
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