第19話
(ふーん、彼でも多少は年相応な反応をすることもあるのね)
稚沙は興味深く倉庫内を見渡す
その後椋毘登も、倉庫の中を一通り見れたようで、それなりに満足は出来たようである。
「とりあえず中の様子は確認出来たかな。もう十分だ」
彼はそう稚沙に話すと、倉庫の入り口から離れて、
「椋毘登殿は、今日この宮に泊まられるのですか?」
古麻は少し気になったのか、そう彼に尋ねた。
「正直、今日は元々その予定ではなかった。ただせっかくだし、もう少し色々と見てみたい。なので宮の人には、これからお願いしてみるよ」
彼は笑顔で古麻にそう話した。
何故だか分からないが、椋毘登は古麻には妙に親切な感じに稚沙は思えた。
(何か私とは態度が少し違うような……)
それから彼は「じゃあ、これからその話をしに行ってくる」といってその場を離れていった。
稚沙と古麻はそんな彼を、そのまましばらく見送っていた。
彼が見えなくなると、古麻が稚沙に話しかけてきた。
「まさか、蘇我の方が来られていたなんて。しかも馬子様の甥の方が……
蘇我馬子の代理となれば、本来は彼の息子である
となると、椋毘登はそれだけ重要視されているのだろうか。
(そういえば前に、彼が
稚沙には今一そこは理解できない。
「本当にどうしてなんだろう?前に見かけた時も、今後は
「まぁ、稚沙ったら。椋毘登殿といつそんなに仲良くなっていたの?これは本当に意外だわ」
古麻は少し意地悪な感じで、稚沙にそう話した。
「べ、別に仲良くなんてない!前回はたまたま知り合っただけだし……それに彼、古麻との方が楽しそうに話していた感じじゃない?」
稚沙は少し拗ねた口ぶりで、古麻にそう話す。
「まぁ、確かにそうよね。でもそれは仕方ないでしょ?私は稚沙より年上だし、それに私の方が美人だわ」
古麻は少し愉快そうにしながらそう話す。
稚沙も古麻の方が自分よりも美人なのは確かだと思っている。
なので彼女がいうように、これはどうしようもない。
(古麻は私と違って、顔立ちも割りと整ってるし、それに女性としての色気もあるから……)
自分も彼女のような容姿で生まれていたら、どれほど良かった事だろう。稚沙は目の前にいる古麻を見て、ついついそんな事を考えてしまう。
(もしかして椋毘登も、古麻のような綺麗な娘には優しくするの?)
これに関しては何とも皮肉に思うことだが、こんな事に腹を立てても虚しいだけである。
「はい、はい、それは分かりました。で、これから古麻はどうするの?」
今は余りここで雑談ばかりはしていられない。早くこの倉庫を何とかしなければ。
「そうね、とりあえず私は倉庫の掃除の続きをするわ。稚沙も手伝ってくれる?」
「うーん、そうね。今日はそこまで忙しくないし……それなら他の女官に話してから、またここに戻ってくることにするわ」
こうして2人はその後、他の者達と一緒に倉庫の片付けに取りかかることにした。
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