第43話
この家の使用人達の話し声が聞こえて来た。
「
「本当にそうよね。それでだいぶ政り事の体制も落ち着いたようで、最近
(え、大泊瀬皇子の妃選び?)
韓媛は意外な会話が聞こえて来たので思わず足を止めた。
それから慌てて隠れ、使用人達の話しを聞き入る事にした。
「え、あなたどうしてそんな話し知ってるのよ?」
「この間
(え、この件はお父様の耳にも入ってるの……)
韓媛はこの話しを聞いて思った。
もしかするとこの件は、彼女の父親も以前に大泊瀬皇子から何か聞いていたのかもしれない。
さすがに大和の皇子の婚姻の絡んだ話しだ、娘の韓媛に話す事でもないと思ったのだろうか。
「まだ大王自身も正妃を娶ってないのに、弟皇子の妃を先に見つけたいなんて……
やっぱり大泊瀬皇子には、それだけ早く落ち着いて貰いたいと思ってるんでしょうね」
(でもそうすると、大泊瀬皇子の相手ってもう決まったのかしら)
韓媛はそこが一番重要な気がして、さらに身を乗り出した。
「それでその候補が誰かは聞いてないの?」
「一応候補は決まってるみたいだけど、相手が誰なのかは円様も確認出来なかったみたい。
なので、今回の候補に韓媛様は入ってなさそうね。もしそうなら、円様の元に大泊瀬皇子から話しが来るでしょうし」
とりあえず、韓媛が確認出来たのはそこまでだった。その後彼女は使用人の人達に気付かれないよう、そっとその場から離れた。
(以前、
韓媛はとぼとぼ歩きながら、先程の話しを思い返していた。
最近大泊瀬皇子は、父親の円の元に来ると必ず韓媛にも会いに来ていた。そんな彼の事を、韓媛も少なからず心待にしていた所もある。
だが先程の話しからすると、彼は別の女性を妃に考えているようだ。
「いやだわ。これだと私、まるで皇子に期待していたようになる……
ううん、きっと彼が幼馴染みだから少し寂しく思ってるのだわ」
韓媛は自分にそう言い聞かせる事にした。
大泊瀬皇子は元々少し傲慢な所があり、その性格で人から恐がられたり、相手と対立しやすい所がある。だが韓媛に対しては割りと優しく接してくれていた。
それも彼からしてみれば、気心のしれた数少ない人間だったからなのだろうか。
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