第60話

そして翌日、忍坂姫おしさかのひめは目を覚ました。


「うーん、あれ。もう朝になったのね」


忍坂姫はゆっくりと体を起こした。部屋の外からは太陽の光が入って来ていた。


昨日は雄朝津間皇子おあさづまのおうじが通っていた娘の件で、とても辛かった。

その後、雄朝津間皇子がどうなったのか気にはなるが、今は余り彼とは会いたくない気分だ。


「とりあえず、服を着替えよう。食事は食べる気がしないから、飲み物だけ貰おうかしら」


そして忍坂姫が服を着替えている丁度その時だった。

部屋の外から声が聞こえてきた。


「忍坂姫、伊代乃いよのです。もう起きられてますか?」


伊代乃がこんな朝早くからやって来るのは珍しい。また何かあったのだろうか。


「伊代乃、起きているわ。今丁度服を着替えている所よ。何かあったの?」


それを聞いた伊代乃が続けて言った。


「それが、今日の朝早くに雄朝津間皇子が宮に戻って来られました。それで忍坂姫が起きたら、直ぐに会いに行くから教えて欲しいと言われてます」


(え、雄朝津間皇子が……)


やはり、昨日千佐名ちさなと言う娘の元に行って何かあったのだろうか。

そう思うと、胸が締め付けられて苦しくなる。


「分かったわ。もう着替えが終わるから、ちょっと間をあけてから来て欲しいと、皇子に伝えてもらえる?」

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