第46話

そして徒歩で向かった忍坂姫おしさかのひめ達は、やっとの事で、雄朝津間皇子おあさづまのおうじ達のいる場所まで辿り着いた。


(そう言えば、私大王とは初めてお会いするのよね。上手く挨拶出来れば良いけれど)


忍坂姫は、今まで噂でしか聞いた事のない瑞歯別大王みずはわけのおおきみに会えるとの事で、少しだけ緊張していた。


彼女がふと遠くを見ると、雄朝津間皇子を発見した。そしてそのとなりには見知らぬ男性がいた。かなり身なりの良い服装を着ており、身長も雄朝津間皇子よりも少し高かった。


忍坂姫の手を繋いで一緒に歩いていた市辺皇子いちのへのおうじは、その男性を見て言った。


「あ、大王が来てる!」


それを聞いた忍坂姫はさらに緊張してきた。


(あ、あの人が瑞歯別大王……)


するとそんな2人に雄朝津間皇子が気付いたらしく、こっちに来るよう手で振った。


そして忍坂姫と市辺皇子は瑞歯別大王の前までやって来た。


「大王、お久しぶりです」


市辺皇子はそう大王に挨拶した。


「あぁ、市辺。久しぶりだな、元気にしてたか」


そう言って彼は市辺皇子の頭を軽く撫でてやった。市辺皇子も大王に撫でられてご機嫌のようだ。


そして瑞歯別大王は、今度は忍坂姫の方を見た。


「雄朝津間、この子が忍坂姫か」


瑞歯別大王は横にいる雄朝津間皇子に聞いた。瑞歯別大王自身も忍坂姫と直接会うのは初めてだった。

雄朝津間皇子と忍坂姫が昔1回会った時の事は聞いていたが、その時、瑞歯別大王はその場にはいなかったのだ。


「あぁ、そうだよ」


雄朝津間皇子は、ボソッと言った。

彼女が思うに、何故か彼は少し面倒臭そうな表情をしていた。


「瑞歯別大王、どうも始めまして。稚野毛皇子わかぬけのおうじの娘の忍坂姫です。この度はお会い出来てとても光栄です」


そう言って忍坂姫は軽く頭を下げた。


「いやいや、こちらこそ。今回は宮までこさせる形になって本当に済まない。雄朝津間皇子の相手は何かと大変だろう」


瑞歯別大王はとても気さくに忍坂姫に話しかけてきた。


「いえ、そんな滅相もない。雄朝津間皇子には色々とお世話になってます……」


忍坂姫はそう言うと、初めて瑞歯別大王をまじまじと見た。

彼は背も高くてとても凛々しい。そして何より本当に綺麗な顔立ちをしていた。これは年頃の娘達が騒ぎ立てる訳だ。


(これは噂以上だわ......なんて素敵な方なんでしょう。何かドキドキしてくる)


そんな瑞歯別大王を目の前にして、忍坂姫もすっかり彼に見入ってしまった。


雄朝津間皇子はそんな彼女の状態に気が付いたみたいで、少しため息をついた。


(やっぱりな。この子が兄上を見たら何かこうなるような気がしてたんだよ)

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