市辺皇子との交流

第23話

翌日の朝、忍坂姫おしさかのひめ雄朝津間皇子おあさづまのおうじのいる宮の部屋の中で目を覚ました。

今日から1ヶ月間はこの宮で生活をする事になる。


「はぁー今日も良い天気ね」


忍坂姫はその場で思わずあくびをした。昨日は思いも寄らない雄朝津間皇子の発言を聞いて、ただただ驚きと悲しみでいっぱいだった。


昨日雄朝津間皇子との話しが終わった後、衣奈津いなつにも一応事情を伝えたが、予想通りかなり怒っている様子だった。

そこを彼女は必死になだめて、何とか納得して貰えるようお願いした。


そもそも今回の婚姻は、2人の意志を尊重して進めるものだ。一方的に雄朝津間皇子を責める事も出来ない。


また自身が雄朝津間皇子に惹かれている事は、衣奈津には言わないでおいた。


「とりあえず、今日から何をやって過ごしたら良いんだろう」


忍坂姫は使用人ではないので、別にこの宮で働く必要もない。要は客人の扱いだ。


とりあえず、この宮には今回初めて来たので、まずは宮の中を探索してみようかとも思った。


彼女がそんな事を考えていると、部屋の外から女性の声が聞こえて来た。


「忍坂姫様、お早うございます。朝のお食事をこのお部屋にお持ちしても宜しいでしょうか」


どうやらこの宮の使用人の女性のようだ。


「えぇ、分かったわ。今丁度起きた所なの。少し時間をあけてから持って来てもらえる?」


それを聞いた使用人の女性は、「分かりました。ではそのようにさせて頂きます」と言って部屋を離れていった。


それから忍坂姫は服を急いで服を着替えた。


そして暫くすると部屋に朝の食事が運ばれて来た。


「本日より、姫様のお世話をさせて頂きます、伊代乃いよのと申します。何とぞ宜しくお願いします」


部屋に食事を持って来た伊代乃は、そう挨拶をした。見た目は忍坂姫と差ほど年の変わらないように思える。


「伊代乃ね、分かったわ。ちなみにあなた歳はいくつなの?」


「歳ですか、今は14です」


忍坂姫は自分と歳が余り変わらない事を知って嬉しくなった。

出来るなら彼女とは仲良くしたい。


「じゃあ、私の1つ下かしら。伊代乃これから宜しくね」


忍坂姫は笑顔で彼女にそう答えた。


それを聞いた伊代乃はとても驚いた。彼女は皇女と聞いている。そんな彼女が使用人の自分に、こんな気さくに声を掛けてくるとは、思ってもみなかった。


「皇女様から、そんな風に言って頂けるとは思ってもみませんでした。そんな気さくに話されて宜しいのですか?」


「えぇ、私は別に気にしてないわ。あなたとは歳も近いようだし、出来れば仲良くしたいと思ったのよ」


それを聞いた伊代乃はとても感動した。彼女が皇女と聞いていたので、もっと気難しい姫かと思っていた。

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