第17話

(どうしよう、このままじゃ皆殺される……)


忍坂姫おしさかのひめもさすがに体が固まってしまい、ブルブルと震え出した。


そんな彼女を見た衣奈津いなつは、さらに強く彼女を抱きしめた。




これで本当におしまいだと思ったそんな時だった。


「お前達、こんな所で悪行をしてたのか。やっと見つけたよ」


「だ、誰だ。お前は!」


思わず、盗賊の一人が叫んだ。


忍坂姫が恐る恐る前を見ると、そこに1人の青年が立っていた。

とても身なりの良い服装を来ていて、忍坂姫より数歳年上に見える。


「この辺りで盗賊が出ると言う話しを聞いて、それで張り込んでいたのさ」


それを聞いた2人の盗賊は、その青年に向けて剣を取り出した。

相手は1人だ、2人で掛かれば何とか倒せるだろう。


「お前みたいなガキに何が出来るって言うんだ。では先にお前から始末してやる」


そう言って2人そのはその青年に斬りかかっていった。


すると青年は素早く剣を取り出し、先にやって来た男の腹を一瞬で切った。


「き、きさまー!!」


男は余りの痛みにその場に倒れ、動けなくなった。

そしてその男に止めを刺す為に、さらにもう1回剣を刺した。

すると一瞬男は声をあげたが、すぐに息を引き取った。


それを見たもう1人は、恐ろしくなり1歩後ろに下がった。


そして「こ、これは、やばい」そう言って逃げようと後ろを向いた瞬間、青年が素早くやって来て、後ろから男の背中を縦に剣で切った。


「ぎゃー!!」と言って、その男は足元をふらつかせた。


男がふらついた隙に、さらにもう一振剣を浴びせた。

するとその男もその場に倒れたのち、暫くして息を引き取った。


それは本当にあっという間の出来事だった。


そしてその青年は「ふぅーやれやれ」と言ってから、腰にあった布を取り出し、剣についた血を拭き取った。

人を2人殺したと言うのに、表情は至って冷静だ。


忍坂姫はその状況を呆然と見ていた。


(この人一体何者なの?)


剣を拭いて腰に戻すと、その青年は忍坂姫達に向かって言った。


「最近、この辺りで盗賊が出ていると言う話しがあったんだ。あなた達もとんだ災難だったね。まぁ、これで盗賊はいなくなったから大丈夫だと思うけど」


忍坂姫はとりあえずお礼を言わなければと思い、まだブルブルと震えている体を必死で押し退けて前に出た。


「あのう、本当に助けて下さって有り難うございました。もう本当に駄目かと思いました」


忍坂姫はそう彼にお礼を言った。


そんな彼女を見た、青年はにっこりとして言った。


「別に気にしなくて良いよ。元々そのつもりでこの辺りにいたんでね」


そんな彼を見て、先程まで剣を使って人を殺したとは到底思えなかった。

先程の彼は本当に恐ろしかった。


「とりあえず、この男達の処理を近くの村の人に任せるつもりだ。君達も移動中なんだろう?早く行った方が良い」


そう言いながら、彼は既に死んでいる男2人を道の隅に動かし出した。


忍坂姫達が歩けるようにしたいのだろう。


「本当に何から何まで、すみません。私の名前は……」


彼女がそう言おうとすると、衣奈津が横から止めた。


「お名前を出すのは控えた方が宜しいかと」


それを聞いて忍坂姫はハッとした。

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