盗賊と謎の青年
第15話
翌日、
とは言っても歩いてそれ程離れていない距離の為、道のりはさほど大変ではないと思った。
見送りには
「忍坂姫、では雄朝津間皇子にくれぐれも失礼のないようにするのだぞ」
娘の婚姻がかかっているとは言え、年頃の娘を持つ親としては、やはり心配もしていた。
「そうですよ。同じ皇族の者として、しっかりとした振る舞いを忘れずに。あなたは息長にいた期間が長いから、余りお転婆な事は慎みなさいね」
母の百師木姫も、夫の稚野毛皇子と同じ心境だった。雄朝津間皇子に何かあったとなれば、それは大王も知る事になる。
今の大王は、皇子時代に実の兄を謀反があったとはいえ、その兄の暗殺もしている。その時はとても残忍な皇子と思われていた。
だがそんな
「お父様、お母様、そんなに心配なさらなくても大丈夫です。私だってそれぐらいの分別はあります。
仮にもし何かあったら、直ぐに連絡もしますから」
忍坂姫はそんな心配性な親達も見て、少しため息をついた。自分はそんなに頼りないと思われてるのかと。
そもそもこの婚姻を勧めてきたのは、自分達だろうに。
(はぁー、何か気落ちしそう)
それでも自分をここまで心配してくれている親だ。その気持ちは本当に有り難い。
「稚野毛皇子、百師木姫様、私衣奈津が責任を持って雄朝津間皇子の元に送り届けます。どうぞご安心下さい」
衣奈津が横から皇子夫婦に言った。彼女は忍坂姫を雄朝津間皇子の宮まで送り届ける事になっている。
「では、そろそろ行きますね」
今回の移動は距離が近いので、もっぱら徒歩で向かう事になっていた。
こうして、忍坂姫は雄朝津間皇子のいる宮に向かう事になった。
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