第3話

こうして即位から6年目にして、去来穂別大王いざほわけのおおきみは崩御した。


それから暫くして葬儀も行われ、皆大王の崩御をとても悲しんだ。


だがいつまでも悲しみに浸っている訳にはいかない。

次の新たな大王を決めないといけないからだ。


現状では、大王の皇子の市辺皇子いちのへのおうじはまだ6歳になったばかりである。

2年前に、皇子の母親である黒媛くろひめも既に他界している。


そんな幼い皇子を大王にするのは無理があった。



そこで臣下達は考えて、弟の瑞歯別皇子みずはわけのおうじを次の新たな大王にする事を決めた。


彼の唯一の妃である、皇女ではない佐由良を皇后にするかどうかは意見が分かれた。

そこで佐由良に関しては、一旦妃のままでいる事で話しがまとまった。



「瑞歯別皇子いえ、瑞歯別大王みずはわけのおおきみ。この度はご決断頂き、真にありがとうございます」


臣下達は皆彼に頭を下げた。


(今のこの現状では、自分が大王になる他ない)


彼は何の抵抗もなくこの事実を受け入れた。





(出来れば、佐由良や阿佐津姫あさつひめとこのまま静かに過ごしたかった。だがあの2人を守る為なら、俺は何だってやってみせる)



こうしてこの大和王権に、新たな大王が誕生した。

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