第43話

(うーん、ここはどこ?)


佐由良はふと辺りを見渡した。


すると知らない女性と男性が立っていた。

顔を見ようとしても、何故かはっきりとは見えない。


(何だろう、ひどく懐かしい感じがする)


「あなた達は誰なの?」


その女性と男性は、佐由良に何か言っているようだが、何を言っているかは分からない。


そこでその景色は消えていき、徐々に意識が戻ってきた。



そして佐由良はふと目を覚ました。


「あれ、ここはどこ?」


「あら、佐由良。気がついたのね」


気が付くと彼女は自分の部屋に横たわっていた。そして側にいたのは胡吐野ことのだった。


「胡吐野、私は一体……」


「あなた肩に深い傷を負ってずっと眠っていたのよ。でも何とか峠は越えられたようね」


「そうだ、私男の人に掴まって、皇子を助ける為に」


佐由良が起き上がろうとした瞬間、肩に激痛が走った。


(い、痛た!)


「佐由良、駄目よ。まだ完全に傷が塞がった訳ではないんだから。しばらくは安静にしてなさい」


そう言って胡吐野は佐由良を再度寝かせた。

本当にこんな怪我を負って、よく無事でいられたものだと彼女は思った。


胡吐野にそう言われた為、仕方なく佐由良は横たわったままの状態で彼女に話しかけた。


「私が意識を失った後はどうなったの。葛城の人達は捕まったの」


「いいえ、あいつらには上手く逃げられてしまったわ」


「そうなの」


(あの人達、最初から皇子の命を狙ってたんだ。それに私がまんまと使われたって訳ね)


今思い出しても本当に震えが来る。


「あと瑞歯別皇子みずはわけのおうじのへこみようは半端なかったわね。あなたをあんなに目合わせてしまったから」


「え、皇子が」


それを聞いた佐由良はとても驚いた。

確かに彼女が意識を失う瞬間、必死で自分に声を掛けてくれていたのは、何となく覚えていたが。


「自分のせいでまきこんでしまったと思ってるわ」


(あの、瑞歯別皇子がそこまで気にかけてくれてたなんて……)

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