第42話

(一体どうすれば。このままじゃ皇子が)


佐由良は思わずその刃物を自分の肩に刺した。


「お前、何するんだ」


その瞬間に嵯多彦さたひこの腕が緩んだ。


(よし、今だ!)


瑞歯別皇子みずはわけのおうじが、つかさず嵯多彦を殴り付けた。


「おい、誰かいないか!!」


瑞歯別皇子はその場で大声で叫んだ。

するとその声を受けてようやく家臣達がやって来た。


「嵯多彦様、これはまずいですよ」


「仕方ない、ここは一旦逃げるぞ」


そう言って近くにとめてあった馬に乗り、嵯多彦達はいそいそと逃げて行った。


「皇子一体何事ですか」


家臣達は皆この光景を見て驚いた。


佐由良は肩にかなり深い傷を負おっていた。


「おい、大丈夫か。しっかりしろ!」


「皇子、ご無事で良かったです……」


だが、佐由良は意識がもうろうとしていた。


「おい、早く傷の手当てをしろ!!」


皇子にそう言われ、周りがあわただしく動き出した。


「何とか持ちこたえてくれ、おい、佐由良!!」


(皇子が始めて、私の事を名前で呼んでくれた)


そう思った瞬間佐由良の意識は途絶えた。

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