第32話

「だいぶ寒くなって来ましたね。ねぇ皇子」


「あぁ、そうだな。今年は稲の収穫もしっかり取れたのが有り難い」


瑞歯別皇子みずはわけのおうじは家臣と政の話しをしていた。


「そう言えば黒媛様も懐妊されたそうで、時期的に大王とのお子なので、大王もとても喜んでおられました」


黒媛は住吉仲皇子すみのえのなかつおうじとの事があったので、去来穂別大王いざほわけのおおきみも急いで子供を授かりたいとは考えていなかった。

ただ時期的に今回の妊娠は、住吉仲皇子との事が起きる前に授かってる為、大王の子供で間違いないとの事だった。


黒媛自身も出産に向けて、前向きに考えだしたので、周りの者達も安心していた。


「皇子も大王から、早く妃を娶れと言われてるそうじゃないですか。その辺りはどうされるのですか?」


(またその話しか。その件なら兄上からさんざん言われている)


「別に急いでしなくても問題なかろう。ただ兄上が心配性なだけだ。

まぁ自身の子供が生まれたら、さらに言って来るだろうがな」


「はぁーそうですか。まぁ皇子がそう言われるなら……」


(本当にどいつもこいつも。なぜ妃選びにこだわるのか理解出来ない。元の発端は兄上だが。

住吉仲皇子の事があったからか、俺に早く落ち着いてもらいたいのかもしれん)


「ふぅー」と瑞歯別皇子はため息をついて、外を見た。

これからどんどん寒くなっていく頃だ、冬の備えもして置かなければいけない。

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