瑞歯別皇子の危機

第31話

佐由良が瑞歯別皇子みずはわけのおうじの元に来てから、1ヶ月程が経ち、佐由良も新しい宮仕えにだいぶ慣れて来た頃だ。


そんな中、新たな事件が起ころうとしていた。



先の大君、大雀大王おほさざきのおおきみの皇后であった磐之媛いわのひめが亡くなり早1年が経とうとしている。


磐之媛は豪族葛城の姫で、大和と葛城との政略結婚であった。


ただこの時代、一族同士の政略的な結婚は珍しいものではなく、当たり前のように行われていた。


磐之媛の婚姻のお陰で、葛城は大きな権力を持ち合わせるようになった。



磐之媛命の従兄弟にあたる嵯多彦さたひこは、元々母親の身分が低かった為、余り良い扱いを受けておらず、育った環境も恵まれていなかった。その為、彼は野心がとても強かった。


そして従兄弟の磐之媛を一途に慕っていたが、彼女は大雀大王に嫁ぎ、そして亡くなってしまった。


その為大和に対して恨みを持っていた。


「今の去来穂別大王いざほわけのおおきみが死んでも、まだ弟の瑞歯別皇子がいる。何てたって実の兄も平気で殺せる奴だ。

とすると、先に瑞歯別皇子を殺した方が良いか。そうすれば大和もだいぶぐらつくはずだ」


彼の目的は、大和そのものを滅ぼし、そして自分自身が大きな権力を得る事だった。


「とりあえず、準備を始めるか。そして最終的に皇子が油断した所で一気に止めをさす」

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