第24話

住吉仲皇子すみのえのなかつおうじは、1人空を見上げていた。


「私はこれからどうなるのだろうか」


ただ自分は黒媛が欲しかっただけだ。

その為には、去来穂別皇子いざほわけのおうじを倒すしかなかった。


だが兄の去来穂別皇子は上手く逃げてしまい、家臣もほんのわずかとなってしまった。


(このままどこか遠くに逃げてしまおうか……)



「住吉仲皇子」


名前を呼ばれ彼が振り向くと、そこには刺領巾さしひれが立っていた。


刺領巾は手に刃物を握っている。


「刺領巾一体どうした。刃物など握って」


住吉仲皇子が刺領巾の顔を見ると、彼の顔は凄い狂気に満ちていた。


そして何とも異様な空気を出している。


「皇子、去来穂別皇子はもう許しては下さいません。それで瑞歯別皇子みずはわけのおうじから話がありました」


「何?瑞歯別が」


刺領巾はゆっくりと住吉仲皇子に近付いていった。


その狂気の顔に恐れを感じ、彼は思わず後ずさりをした。


「瑞歯別は何と言って来たんだ」


「はい、皇子は……」


そう言った瞬間、刺領巾はすぐさま住吉仲皇子の元に走って来て、

握っていた刃物で住吉仲皇子の体をグサッと一気に刺した。


「何、何をするんだ刺領巾」


住吉仲皇子は思わず体をふらつかせて、その場に倒れた。


その様子を見ながら刺領巾は、


「瑞歯別皇子は、皇子を殺すよう私に命じられました」と冷たく言った。


「瑞歯別が私を殺せとだと。くそ、刺領巾……お前も裏切ったな」


住吉仲皇子の受けた傷は思いの外深かった。


そしてしばらくのたうち回った後に、彼は息を引き取った。


刺領巾は住吉仲皇子が亡くなったのを確認し、彼から刃物を抜いた。


そしてそのまま、彼は瑞歯別皇子の元へと向かって行った。

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