第23話

瑞歯別皇子みずはわけのおうじ住吉仲皇子すみのえのなかつおうじが元々いた宮に寄った。


宮に使えているもの達は、皆集められていて、厳重に見張られていた。


調べによると、今回の住吉仲皇子の反乱は、皇子が独断で起こしたもので、宮仕えの者達は知らされていなかったようだ。


ただ皆とても怯えていた。

女達の中には泣いてる者さえいた。


その中には、吉備海部の娘佐由良もいた。


(住吉仲皇子、どうか無事に助かりますように)


こんな事を願っているのがバレたら、自分も疑われて殺されてしまうかもしれない。


でも心の中ではずっと祈っていた。



瑞歯別皇子はふと佐由良を見た。

吉備から来た娘の為、裏切り行為がない場合は命を断つ事はさせない。

ただ噂によると、住吉仲皇子を慕っていたと聞く。


(まぁ、宮の女達の間ではよくある話だな)



佐由良はふと人の視線に気が付いた。

思わず振り向くと、その先には瑞歯別皇子が立っていた。

皇子は自分と目があった為か、慌てて顔を背けた。


(どうして私の事見てたんだろう?)


そんな彼の事が一瞬気にはなったが、今の彼女にはそれどころではない状況である。


(まぁ、今の私にはそんな事考えてる場合じゃないわね。)


その時ふと思い出した。

まだ自分が吉備にいた頃、大和に行かされる話を聞いたあの日。

黒日売の元から家に戻る途中に見た不思議な光景の事だ。


あの時見た光景の中にいた1人の少年。

その少年が瑞歯別皇子に似ているように思えた。

(あの時も身なりの良い服を来ていたし、背格好も似ている……)


「でもまぁ、そこまで気にする事でもないわね」

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