第22話

住吉仲皇子すみのえのなかつおうじの側近であった阿曇浜子あずみのはまこの命令で、後を追った淡路の野島の海人らは、去来穂別皇子いざほわけのおうじに捕らえられてしまった。


また住吉仲皇子の味方にいた倭直吾子籠やまとのあごこも、去来穂別の兵に恐れをなし、妹の日之媛ひのひめを献上して許された。


こうして、住吉仲皇子は孤立していった。



その事を知った瑞歯別皇子みずはわけのおうじは、住吉仲皇子近習の隼人である刺領巾さしひれに近付いた。


「刺領巾、去来穂別皇子は住吉仲皇子を討つようにと仰せだ」


「やはり皇子はそのお考えか」


刺領巾は自分もこのまま殺されてしまうのかと思った。


だが瑞歯別皇子は、意外な提案を彼に持ちかけた。


「住吉仲皇子を討つのなら、彼の近場にいる者が殺すのが手っ取り早い。そこでお前に兄上を殺してもらいたい」


「私に住吉仲皇子を殺せと」


「さよう。さらに兄上を殺した暁には、お前を大臣にしてやってもよい。

どうだ、お前にとっても悪くない話しだろう」


刺領巾は無言で考えた。


恐らく断れば今この場で自分は殺されてもおかしくない。

であれば、この話しにのれば命が助かる上に、大臣の役にもつける……


「分かりました。住吉仲皇子は私が討ちましょう」


刺領巾は自らが皇子を殺す事を、瑞歯別皇子に誓った。


「そうか、やってくれるか」


瑞歯別皇子はそれを聞くと、出来るだけ早くに実行するよう伝えて、彼の側を離れた。



「住吉仲皇子、済まない。そうしなければ私が殺されてしまう」


刺領巾は、今尚孤立している住吉仲皇子が哀れに思えて仕方なかった。

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