第7話

「とりあえず、私が占えた事はここまでです。後は佐由良様自身で運命を切り開いて行くほかないでしょう」


「そう、分かったわ。有り難う伊差奈いざな、もう下がって良いわよ」


伊差奈は黒日売くろひめにそう言われた為、「では、これで失礼します」と言ってあっさり部屋を出て行った。


「これから大和で本当に何かあるのかも。それがここ吉備や海部まで影響が出ないと良いのだけれど」


黒日売も少し伊差奈の占いが気になるようだった。


また佐由良も同様に、さっきの伊差奈の話した内容を思い返して考えてみるも、いまいち理解しにくい。


「叔母様、私自身は海部を離れたくはない。でも、もしかしら大和に行くのが私の運命なんじゃ……」


すると黒日売は佐由良に歩み寄り、彼女を頭を撫でた。

それはまるで母が娘を慰めるかのように。


「そうね、貴方にとって故郷の海部を離れるのは本当に辛いことよ。

ただ神々が佐由良の見方になって頂けるよう、私もお祈りさせて頂くわ。さぁ、もうだいぶ暗くなって来たから、佐由良あなたも家に戻りなさい」


佐由良は涙を手で拭いた。


「そうね、余り長くいてしまうとまた奈木に何か言われそうだし」


佐由良はすっと立ち上がり、そして黒日売の部屋を出ようとした。


「あ、佐由良ちょっと待って」


黒日売は慌てて佐由良を呼び止めた。


「そう言えば佐由良に渡したい物があったのよ」


そう言って彼女は部屋の隅に行き、何かを持って戻って来た。

見るとかなり古い袋のようで、そこから中に入っている物を取り出した。


佐由良が彼女の取り出したものを見ると、それは古い勾玉の首飾りだった。


「叔母様、これは?」


「これは麻日売あさひめが亡くなる時持っていた物だそうよ」


「麻日売……お母様が!」


「それで、その時彼女の世話に携わっていた者が持っていたみたい。ただどうして良いか分からず私の所に相談に来たの。

それで、この首飾りは今まで私が持っていたのよ」


佐由良は、思わずその首飾りに見入った。

見た目は古そうだが、中々物は良いみたいだ。


「世話の者に託すぐらいだから、とても大切なものだったのね。それで佐由良が大きくなったら渡そうと思っていたの」


そう言って黒日売は、その首飾りを佐由良に渡した。

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