第6話
「そうだわ、
「え、伊差奈に」
そう言うと
「伊差奈、ちょっと来てくれる!」
黒日売の声に伊差奈はすぐに気が付き、いそいそと黒日売の部屋に現れた。
伊差奈は黒日売の身の回りの世話をしている者で、占いやまじない等にも長けていた。
「黒日売様、どうなさいましたか?」
伊差奈は60手前の老婆で、黒日売が幼い頃から使えていた。
「伊差奈、急で申し訳ないけど、佐由良の事を占ってもらえない。今日お父様の命令で、大和に
「何と佐由良様が……分かりました。では早速見てみましょう。では少し失礼させていただきます」
伊差奈はさほど驚きもせず、そのまま部屋を離れた。
すると黒日売がまた佐由良に話し掛けて来た。先日までは黒日売も
「でも、あなたが送られるのは、
「さぁ、大和に行くようにとしかまだ聞いてなくて。だから詳しい事は分からないわ」
「まあ、そうなのね」
佐由良にとって黒日売は良き自分の理解者であり、また母や姉のような存在でもあった。
それから黒日売と佐由良は日常の些細な話しなどをして伊差奈が戻って来るのを待った。
そしてしばらくして、伊差奈が占いを終えて戻って来た。
「黒日売様、佐由良様の事を占ってまいりました」
「伊差奈ご苦労だったわね。さぁ内容を教えてもらえる」
「はい、かしこまりました。では佐由良様も宜しいですね」
「ええ」
伊差奈は二人の前に座って、さっそく話し出した。
「佐由良様はこの先、とてつもない運命に巻き込まれると出ておりました」
「とてつもない運命……」
「はい、それは古からの縁の導きによってもたらされるものであり、それを自らの運命と受けとめて向かえば、道は開かれるであろうと」
「何だか良く分からない内容ね」
黒日売も首を傾げた。
「もしかすると、これから大和で何か重大な事が起きるのかもしれません」
今大和では先代の大王が亡くなり、新たな大王を立てる前だ。その為、大和内で何か混乱が生じていても不思議ではない。
「そんな時に大和に行かないといけないなんて……」
佐由良はそれを聞いて少し不安に思えた。今回大和から采女の話しがあったのも、何か関係がしているのだろうか。
「それともう一つ、この先会う者達との出会いが、今後の佐由良様に大きく影響するとも出ておりました」
「この先って事は大和でって事?」
黒日売も思わずそう答えた。
そして何とも言葉にしずらく、黒日売と佐由良はお互いに顔を見合った。
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