第8話

「確かに物は良いみたいだけど、そんなに珍しい物ではなさそうね……」


佐由良は再度その首飾りを眺めて言った。


「とりあえず、それは貴方に持たせるわ。麻日売あさひめの形見だと思って」


「そうね、お母様の形見なんて無いと思っていたし。これは頂いていきます」


そもそも、母の顔すら覚えていない有り様で、懐かしさとか母のぬくもりなども知らずに育ったのである。

でもそう言ったものに憧れはが無かった訳では無い。やはり母親と言う存在を恋しく思っていた。


「じゃあ、佐由良気をつけて帰るのよ」


黒日売は心配そうに佐由良を見送った。


「ええ、叔母様本当に今日は有り難う」


そう言って佐由良は黒日売の元を離れ、自分の家へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る