第52話

「まだ具体的には決まってないんですけど、一応行くかもしれないので」


「そっか! ……でもなんか、楽しそうで安心した」



背もたれに背中を預け、リカちゃんの横顔がふわりとほころぶ。



「ちょっとだけ心配してたの。それに毎日保健室で会ってたから何だか寂しくて」



本当に彼女は他の教師とはまるで違う。


本当に教師なのかと疑いたくなるくらい、彼女はこちらが引いた生徒と教師という境界線をするりと抜けて距離を縮めてくる。



だからつい、心を開いてしまうのだ。




「もしもうすぐ死ぬとしたらリカちゃんは、死ぬまでにしておきたいことって何かありますか?」



その横顔に、何気なく尋ねた。



え?と振り返ったリカちゃんの表情に、少し強張りが見える。



もしかしたら、何か悟らせたかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る