第41話

「別に失恋とかじゃないですよ」


「じゃあ、どういう風の吹き回し?」



さすがに「どうせ死ぬんだし、スッキリしちゃえば」とカナメに提案され思い切った、なんて口が裂けても言えない。




とりあえず夏だし暑いから、と無難な言い訳を見つけて口にしておく。




随分、頭が軽くなった気がする。


すっかり短く切り揃えられ、鏡越しに見る自分はまるで別人のようだった。



似合うと褒めてくれた美容師の言葉を真に受けたわけではないけれど、意外と悪くないな、なんて思ってみる。


生まれ変わったと言ったら大げさかもしれないけれど、そんな気分だった。




後ろで、手の空いたアシスタントが三年前の私をホウキでかき集めて掃いていくのを横目に立ち上がり、お礼を言って店を出る。



髪を切るのもこれが最後。


これからやることなすこと、全てに最後、という言葉が添えられるのだと思うと、何だか少し感傷的になった。

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