第35話
ほとんどの生徒が夏の本番に浮き足立って下校した後、私は静かな廊下を少し緊張気味に歩みながら、教室の前までやってきた。
この間のトラウマを抱えながら恐る恐るドアを開けてみると、中はがらんとしていて、窓際の一番後ろの席にカナメが座っていた。
教室で待っているから一緒に帰ろう、とLINEをもらっていたのだ。
安堵のため息をついて教室に入る。机の上にもう花はなかった。
頬杖をついて窓の外を眺めていた彼が、私の気配に気づいて「おかえり」と呟く。
教室に置きっぱなしだった荷物をまとめながら、カナメの方に目をやると夏風がレースのカーテンをふわりと揺らし、彼をも巻き込んで遊んでいた。
「夏って、なんで短いのかな」カナメがポツリと呟く。
さあ、と肩をすくめて、荷物を詰め込んだバッグを肩に下げた。
身の回りの最終確認を済ませて「帰ろう」と彼に声をかける。
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