第34話

「夏は短いからさ、最後まで楽しみなよ」



まるで私がこの先しようとしていることを見透かしているみたいに成美はそう言って、最期のサヨナラを交わすこともなく保健室を出て行った。




成美と入れ替わるように保健室に入ってきたリカちゃんから、評定不可とされた通知表を受け取る。



「じゃあ、次会えるのは二学期ね!楽しみに待ってるから」



いつも私を安心させてくれた笑顔で見送ってくれようとする彼女には、最期くらいきちんとあいさつをしておきたいと思った。



「リカちゃ……、先生」



改まってそう呼ぶと、リカちゃんは不思議そうに眉をひそめる。



「今まで、ありがとうございました」



急に改まってどうしたの、夏休みが終わったらまた会えるんだから、と思った通りの言葉が返ってくる。


本当にいい人だな、と改めて思う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る