第33話

ぼんやりと私たちは揃って窓の外を眺めた。



開いていた窓から二人の間の沈黙を埋めるように蝉時雨が降り注ぐ。




ミーンミンミンミーーン。ミーンミンミンミーーン。




羽をこすり合わせ、静かな校庭に夏を落とす。



「……もしも七日目で死ぬ蝉だったらさ、私たち、最後まで生きられたかな」



ふいに、成美さんが呟くように言った。




きっと、そうだろうと思った。




生まれて七日目で死ねたなら、生きることに悩む暇などなかっただろうから。

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