第22話

「うん」



相変わらず空を仰ぎながら、隣でカナメが空返事を返す。



「全部この学校のせいだもん。死ぬまで絶対恨んでやる」


「うん」


「絶対私がされてきたこと一生忘れない」


「うん」



「……でももうこんな思いするくらいなら、死にたいよ」




ほとんど独り言のつもりでそう呟くと、不意にカナメが押し黙った。



幼馴染で家はすぐ隣。


いつも勝手に私の部屋に上がってくるような彼に対してお互いもう気を使うことなんてほとんどない。


沈黙も共有できる仲だ。




なのに今のこの沈黙は、いつものそれとはどこか違っていた。




「……じゃあ死のっか」



驚いて彼を見上げる。


するといきなり彼は鉄柵を飛び越え屋上の縁に立ち、そこで下を見下ろした。

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