第19話
「うるせえ」
カナメはそう呟き、ようやく私の方に目を向けた。
ドキッとして思わず視線を落とす。
彼の足元は水浸しになっており、割れたガラスの破片がそこら中でキラキラと輝いていた。
途端に居たたまれなくなり、私はそのまま教室を飛び出した。
背後でカナメが私の名前を呼ぶ声が聞こえたけれど、それを振り払うように夢中で走っていた。
この学校には数年前から使われなくなった旧校舎が向かい合うように隣接されている。
今年の秋には取り壊しになる予定だが、気味の悪い噂が絶えないせいか、自ら寄り付く生徒はいない。
正面の鍵は閉められているが、裏口の窓ガラスが破られており、私はよく昼休憩をここで過ごしていた。
あちこち窓が破られているせいか昼間は案外日のあたりがよく、風通しも悪くない。
それより一人でいるところを見られるのが恥ずかしかったし、幽霊なんかより、よっぽど人間の方が怖かった。
中に入り、階段を一気に最上階まで駆け上がる。
「屋上立ち入り禁止」と書かれた看板の下がる錆びた鎖を跨いでその先にあるドアノブを一か八かでひねった。
ガチャ、と固い音がする。
重たい鉄のドアを両手で思い切り押して外に出た。
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