第18話

「あれー、入らないんですか?あ、もしかして幽霊?」


「あはは、誰か塩撒いてよー!」



こら、そんなこと言わないの。


と形だけ叱りつける担任までが口元を歪めて笑いを堪えているようだった。



頭が真っ白になって、めまいがする。


倒れそうになり、ドアにもたれかかると笑い声は一層、激しく沸き起こる。



泣き出しそうになるのをなけなしのプライドだけで押し込めながら、震えるこぶしを握り締めた。



やっぱり、もう無理だ。


どんなに戻りたくてもここには戻れない。




と、その時背後から誰かが近づいてくる気配に思わず身構えると、なぜたがカナメが私の横を通り過ぎ教室に入ってきた。


そして私に目を向けることもなく、一直線に私の机に向かっていく。



「わっ、カナメ先輩じゃん!やばい、超かっこいい!」


「なんで先輩が2年のクラスに?」


ざわめくクラスの女子をよそに、彼は私の机の上に置かれた花瓶を片手で持ち上げると次の瞬間、思い切り床に叩きつけた。



花瓶が凄まじい音で割れて砕け散り、騒めいていた女子たちの甲高い声が悲鳴に変わる。




「ちょっ森くん!何するの!?危ないでしょ!」



担任が癇癪を起こしたみたいに叫んでいた。

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