第10話
いじめの原因はいまだによくわからない。
原因なんてなくても何か条件が揃えば、いじめは竜巻のように自然発生するものなのかもしれない。
例えば、虫の居所が悪い誰かの前を、大人しく自分より弱者な誰かが偶然通りかかるようなそんな日常の中で。
不意に、天井に設置されたスピーカーからチャイムが鳴り響く。
授業の終わりを知らせる合図だ。
静かだった廊下の外が次第に騒がしくなる。
「それ、ここなんじゃない?」
彼女は文庫本を閉じ、パズルの完成写真を指差しながら言った。
持っていたピースと見比べてみる。
確かに上空に漂う雲の形が一致していた。
「……成美さんは、ないんですか? 死にたいって思うこと」
ピースをはめ込みながら、成美に質問で返す。
敬語なのは別に成美が怖いからではなく(多少はあるけど)、彼女が高校三年生で一つ年上だからだ。
「あるよ、それくらい。じゃなきゃ、こんなところに居ないでしょうが」
そりゃそうだ。
保健室にいる生徒にはいつだって何らかの事情がある。
進んでここに来るのではなく、ここに来ざるを得ない事情が。
彼女がここに来る理由についてはまだ聞いていない。
成美も私には聞いて来ないが、お互い何となく察しはついているのだろう。
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