第8話
2
「もしかして、死にたいの?」
文庫本を読みながら、まるで時間でも尋ねるような口ぶりで
保健室の長机を挟み向かい合って座る彼女。
あまり大きくはない目に丸い鼻、全体的にややふっくらとした印象。
これと言った特徴はないけれど、鎖骨のあたりできっちり切り揃えられた髪は黒々と美しい天使の輪を作っていた。
レースのテーブルクロスが敷かれたその長机を、まだ枠しか出来ていないパズルが覆い尽くしている。
完成すれば、沖縄県石垣島の川平湾という場所の絵柄になるらしい。
「何で、急にそんなこと聞くんですか」
私はパズルのピースを適当に一つ摘み上げながら尋ねる。
質問の答えも、このピースの行方もまだ未知だ。
「だって、リストカットしてるみたいだから」
ギクリとする。
一応、猫に引っ掻かれたという言い訳を用意して絆創膏を貼っていたのだけど、彼女には見透かされていたらしい。
死にたいと思ったことなんて、数えきれない。
特にここ最近は毎日のように思っているくらいだ。
ただ毎回、本当に、本気で死ぬ勇気があったかと聞かれると自信はない。
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