第7話
「飯まだだろ?一緒に食べるか?」
そんな私のことなんて露知らず、彼はいつもこうして両親の帰りが遅い私のことを気にかけてくれている。
彼もまた父子家庭で親の不在が多く、今思えば物心つく前からこうして子供同士助け合ってきたのだ。
そういえば、さっきからカレーの匂いがそこら中に漂っていたな、と改めて思う。
けれど今はとてもじゃないけれど、食欲なんて微塵も感じられなかった。
「今日はいいや」と短い返事だけしてそそくさと家の中に入る。
カナメはまだ何か私の背中に言葉を投げかけていたけれど、聞こえてないふりをした。
一刻も早く独りになりたかった。
部屋に閉じこもり、そのまま机の引き出しの中からカミソリを取り出す。
露わになった刃を手首に当てて、ぎゅっと目を瞑る。
走馬灯のように今さっきの記憶が脳を駆け巡り、心拍数がバグバグと上がっていく。
我慢していた涙がぼろぼろとこぼれ落ちて、悔しくて情けなくて恥ずかしくて、手首に食い込むほどに剃刀を押し当てる。
―――もうこんな世界、消えてなくなればいいのに。
私はためらうことなく、カミソリを思い切り横に引いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます