第2話 イレギュラー

冷蔵庫の中身が少なくなって、スーパーに買い物に行くことにした。


買い物は、アリシアと交代で買いに行っていて、今日は私の番だ。


外に出ると、少し肌寒くて、秋を感じた。

ようやく、暑い日も終わったんだなぁ。


私は秋が大好きだ。かぼちゃが美味しい季節というのもあるけれど、涼しくて過ごしやすいからだ。


私の家とアリシアの家は隣で、私たちの家からスーパーまでは20分くらいある。


いつも通りかぼちゃをたくさん買った。いつも通りだったはずの帰り道に、突然イレギュラーは発生した。 


紫色のローブを被った、いかにも怪しいとしか言いようのない人が、たくさんの荷物を持って歩いていた。


今にも倒れそうになっていたから、


「大丈夫ですか?荷物持ちますか?」

と声をかけると、


ローブを頭に深々と被り直し、

「あ、ありがとうございます、少し遠くの霧川山きりかわやままで持ってもらっても良いですか?」

とその人は言った。


この街は、山に囲まれている。

だから、スーパーから山までといってもそこまで遠くはないんだ。

その山の中の一つが霧川山で、少し奥の方にある。


少し不気味な現象が起こるので、あまり近づく人はいない。しかし、山頂にはもう雪が降っていて、景色もとても綺麗な場所らしい。


「そこに住んでいるんですか?景色も最高と聞きます」


「ええ、まあ、そんな大層な場所じゃありませんけれど」

ローブの人は、か細い声を震わせながら、そう言った。


そういう話をしながら、歩いていくと、霧川山が見えた。


その山に着いて、1番初めに思ったことは、不気味とはまるで違っていた。

森が生き生きとしている。

ううん、それだけじゃなくて、全ての生き物が生き生きとしている。


言葉で表すことのできないような、美しさに見惚れてしまった。


なんだか夢の世界に近いような気がした。

近づいたことがなかったから、気づかなかった。こんなに素敵な世界が広がっているだなんて。


私が驚いていることに気づいたのか、

「この場所は不気味とよく言われるけれど、ちょっぴり夢が詰まった場所だから、きっとそう思われてしまうのでしょうね。」

と言い、笑顔を見せた。


「これ、お礼です。きっと、あなたの夢の助けとなるでしょう。また霧川山に来てくださいね。」

と、鍵を渡して、その人は去っていった。

さっきまでか細い声だったのに、芯のあるはっきりとした声だった。


その鍵は現実とはかけ離れたような鍵で、白と虹色が混ざり合い、揺れていた。


なんで、私の夢のことを知っていたのだろう。


なんの鍵かはわからないけれど、大切にハンカチに包んで持って帰った。


不思議な体験だったなぁ。

そう考えつつ、遅くなってしまったから、急いで料理をしていた。


アリシアはいつも18時にご飯を食べていたと言っていて、合わせるようにしているのだ。


夜ご飯を持って行って、ローブの人と、霧川山の話をアリシアにすると、目を輝かせて聞いていた。


「私が夢を追っていることをその人知ってたみたいなんだ」さっき思った疑問も話した。


「それは輝きでわかるよ!頑張る人は輝いてるもん」


輝く???


私が困惑しているのがわかったのか、

「とにかく、わかるの。そういう人は、真っ直ぐな瞳を持ってるんだ。私も瑠歌に対して、そう思ってるもの」


アリシアは頬をぷっくりと膨らませてそう言った。


わかんないなぁ。


明日は日曜日だから、霧川山に行ってみることにした。アリシアは、用事があるということで、私1人で行くことにした。


そうして、霧川山に着き、昨日行かなかった奥まで行ってみることにした。


この山に入ると、不思議な気分になる。ワクワクが止まらない。


すると、ちょうど鍵が入りそうな神秘的な扉が現れた。


まるで、手繰り寄せられているようだなぁ。

そう思いながら、鍵を差し込み、回す。


カチャ


広がっていたのはまさしく夢で溢れる世界だった。




 










 


















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