第40話

39話:文化祭準備と決意


「そっち布足りてるー?」

「赤の絵具ないんだけど!?誰か持ってないー?」


ガヤガヤと、明るい声がクラスから…学校中から響いてくる。

季節はすっかり秋。

早川学園でも、文化祭シーズンだ。

今は、文化祭準備の真っ最中。

昨日何をするか決め、今日から約一週間かけて準備していくのだ。

布。絵具。

千里達のクラス、2年A組が何をするのかと言うと…。

「わー!私、お化け役初めて!…ばぁっ!!似合う?似合う?」

テンション高く話すのは、千里。

お化け用に使う布を頭に被り、興奮した様子で日菜子と千冬に尋ねる。

なお、仕事はまったく進んでない模様。

「似合いますよ、千里さん」

純情(ピュア)で友達想いの日菜子は、否定しない。

というか、心からそう思っているので否定も何もないのだが。

「似合ってるよ。迫力あって怖いね」

千里セコム2の千冬も、否定しない。

ただ、日菜子と違うのは怖いと思ってはいないと言うことだ。

心の中で「可愛い」と思ってるタイプである。

そして千里はーー

「えへへ~でしょ~?」

からかわれているとは露知らず、喜ぶタイプだった。

そんな三人は今、床に布を広げ、良い具合に端を切ったり、赤絵具で血っぽく跡を付けたりしていたのだが…

「ねー誰か段ボール捨ててきてくれない??」

クラスの女子が全員に聞こえるように声をかける。

「あ!私行くよ!…日菜子、ちょっと手伝ってくれない??」

「もちろんです!」

二人は手に持っていた布やハサミを置いて立ち上がる。

「俺行かなくて大丈夫?」

「大丈夫!ありがと、千冬」

私、力持ちなの知ってるでしょ~と言い、千里と日菜子は段ボールを取りに行った。

「大丈夫かな…」

いくら力持ちとは言え千里も女の子。

力仕事をさせるのも少々忍びない。

それに、段ボールだって積み重なれば重い。

やっぱり俺が行けばよかったと思いながら、千冬は黙々と作業を進めた。


           ***


ドサッ

外のゴミ捨て場にて。

千里と日菜子は段ボールをゴミ袋を入れる箱の横に立てかけた。

「…そんなに重くなかったね!」

千冬の心配も杞憂に、千里はまったく重いと感じていなかったようだ。

「私は少し重かったです。千里さんすごいですね…!」

「えへへ~日菜子、手伝ってくれてありがとね」

「いえいえ…」

段ボールも運び終わり、教室に戻ろうと廊下を歩いていると、突然日菜子がピタッと足を止めた。

「千里さん…!」

千里が不思議に思ったのも束の間、日菜子は曲がり角に隠れた。

誰か、会いたくない人でもいたのだろうか。

千里はこっそり角から見ると…

「先輩??」

先輩こと、龍也が千冬と談笑しているところだった。

「なんで隠れるの、日菜子。先輩となんかあった?」

千里は純粋な疑問をぶつける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る