第24話
23話:話さないこともあるでしょう
「「…………。」」
日菜子と先輩は、目配せした。
そして、思った。
((なんだ、この気まづさは!!))
そう、なぜか、花火大会から千里と千冬の様子がおかしいのだ。
目を合わせないし、話さないし。
喧嘩ムードをぷんぷんに漂わせている。
今日は夏休みの登校日。
夏休みの途中、先生が「みんなはめ外さずに過ごしてるか〜?」と、言う謎の登校日である。
まぁ、この日に出す課題もあるので、行く理由はあると言えばあるのだが。
学生にとってはいい迷惑な話である。
「…千里さん、千冬くんと何かありましたか…?」
隣で、寝ている千冬に、聞こえないように小声で尋ねる。
話を戻すと、今千里達は教室にいる。
クラスは家族で海外へ行っただの、ディズニーへ行くなど、浮かれた話題に花を咲かせている。
ただ、千里達の空気は最悪であった。
日菜子がまず、疑問に思ったのは千里と千冬が一緒に登校していなかったことだ。
いつも、千里が遅刻しそうな時も千冬が隣にいた。
何があっても一緒、と言うのが印象的だったので、今回一緒じゃないのが有り得なかった。
挨拶も、どことなく元気がなかったし…。
そして今は、机に突っ伏して拗ねていた。
「…何も無いよ、日菜子…」
(絶対嘘ですよね!?)
さすがに誰にでも分かるくらい、千里の顔は暗い。
と言うよりも、千里がいつも明るいのが最もな理由かもしれないが。
日菜子は後ろを見る。
先輩が、手で✕を作る。
顔が、こっちもだめだー!と言っていた。
なぜいるのかは、気にしない気にしない。
千冬に訪ねようとするが、まだ寝ているらしい。が。
「…千里が勝手に拗ねてるだけだから、松村さんは気にしなくていいよ」
寝ていたと思った千冬が、目をこちらに向けて言った。
口調はいつもと同じく優しいが、何だかな〜という感じである。
それにむっとしたのか…
「…千冬が隠し事するのが悪いんでしょ!」
ガバッと起き上がり、反論する。
両者、バチバチっと火の粉が降りかかる。
その時。
「お前ら久しいな〜もうすぐHR始まるから席に着け…って、…おい、風柳。なんでお前がいるんだ、帰れ!」
木藤先生が入ってきた。…入ってきたなり、先輩を見つけて睨む。
「…わ!きょうねせんせー待って…いだいいだい!」
耳を引っ張られながら、教室を追い出される先輩。
教室で、微かな笑いが盛れた。
「…あ、日菜子ちゃんばいば〜い!」
回りで笑われているのも気にせず、先輩は日菜子に手を振りながら教室を出ていった。
「後で生徒指導室行きだな」
チッと舌打ちをした後、先生はHR始めるぞ〜と言い、教卓に付いた。
千里と千冬は睨み合っていたが、先生の声でふんっと顔を逸らした。
仲直りするにはまだ時間がかかりそう…と、日菜子は思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます