第7話
7話:先輩
「「「………誰!??」」」
千里、千冬、日菜子は同時に声を上げた。
その人物は、混乱する千里達を置いて立ち上がる。そして、
「ちょっとあっちで話そうぜ。」
ニヤリと面白そうに笑い、親指を後ろへ向けた。
***
「あんた、誰よ〜」
千里がジトッとした目で訝しむように見る。
得体の知れない人物に呼ばれ、怪しんでいるようだ。
だが、それは千里だけではない。
千冬達もそれは一緒である。
「悪かったって。いきなり話しかけて。」
千里はその人物を見上げる。
(ソイツの方が千里より背が高かった。)
学校の制服の中にパーカーを着ており、オシャレに着こなしている。
髪は茶髪(たぶん染めている)で、所々跳ねているが、寝癖では無さそうだ。
耳元がきらりと光って、なんだと思えばピアスだった。
右に1個、左に1個とイヤーカフが2つ。
バチバチに開けまくったチャラいとも言えるような人物。
「…名前はなんて言うんですか?」
千冬が敬語を使って聞いている。
千冬は知らない相手には誰であっても敬語を使う。
千里も「そういえば名前知らない!」と言うことに気づいたらしく、後ろでそーだそーだと言う。
日菜子は彼が怖いのか、千里にずっとくっついている。
「あ、わりー。名前言ってなかったな。俺は風柳龍也。お前らの1個上の先輩だぜ。」
1個ということは、2年生か。
そう言えばネクタイの色が違う。
先輩は黄色だった。
「…あ、ボブの君、俺のことは『龍也先輩♡』って呼んでくれて構わないからな!」
千里の片手をきざったく握って、笑う。
まるで舞踏会の姫と王子のようだ。
「絶対嫌ですー!!」
千里はべーっ!と舌をだして反対した。
そんな千里の反応をハハッと明るく笑いながして、話題を変えるように切り出す。
「この制服って1年の色が1番合うよな。」
自分のネクタイを持ちながら言う。
確かに、少し奇抜にも見える。
でもまぁ似合わないことない。
「そうですね〜……じゃないです!!なんで私達を呼んだんですか??」
千里は先輩だと知り、敬語を使って突っ込む。
一応?礼儀を知っている千里である。
千冬も日菜子も頷く。
皆が知りたがっていることだ。
「なんでってそりゃ…」
「「「…………。」」」
ゴクリと唾を飲む千里達。
「そりゃ、マドンナとお近づきになりたいからに決まってるじゃん??」
「「「理由がしょうもなかった!!!」」」
三人揃って突っ込みを入れた。
「しょうもないってなんだよ〜大事なことだろ?可愛い子に目がない男子なんていないぜ?」
パチンと綺麗にウィンクするが、チャラさが増すだけである。
(そ、それだったら千冬くんはどうなるんでしょう…!!?)
どうなる、とは千里が好き(断定はしてない)なのにもし、万が一マドンナに惚れたら…!?と言うことである。
(千里さんも可愛いですけど、もしもの事があったら…いや、でも千冬くんに限って…)
「日菜子どしたの?ずっともんもんしてるけど…」
ハッとした顔で千里の顔を見る日菜子。
その顔を疑問の顔で見る千里。
「…ち、千里さんは私が守りますからね!!」
「あ、ありがとう!?」
突然の『守る宣言』に戸惑いながらも、お礼を言う千里だった。
(…何か千里達盛り上がってる…この場の話は俺が進めておくか…)
後ろをチラッと見て、千冬は決めた。
「それで先輩。俺達にどうして欲しいんですか?」
千冬の一言で、空気が変わった。
(そこまでシリアスではないが。)
先輩は少し悩むような顔をして、やがて口を開いた。
「マドンナと話できるようにしてくれない?…ちょっとで良いからさ!」
パチンと器用にウィンクして見せる。
手も両手を合わせて。
「「「……え、えぇ…??」」」
混乱のような、呆れのような声を三人はだしたのだった。
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