第8話

7話:先輩


「「「………誰!??」」」

千里、千冬、日菜子は同時に声を上げた。

その人物は、混乱する千里達を置いて立ち上がる。そして、

「ちょっとあっちで話そうぜ。」

ニヤリと面白そうに笑い、親指を後ろへ向けた。


***


「あんた、誰よ〜」

千里がジトッとした目で訝しむように見る。

得体の知れない人物に呼ばれ、怪しんでいるようだ。

だが、それは千里だけではない。

千冬達もそれは一緒である。

「悪かったって。いきなり話しかけて。」

千里はその人物を見上げる。

(ソイツの方が千里より背が高かった。)

学校の制服の中にパーカーを着ており、オシャレに着こなしている。

髪は茶髪(たぶん染めている)で、所々跳ねているが、寝癖では無さそうだ。

耳元がきらりと光って、なんだと思えばピアスだった。

右に1個、左に1個とイヤーカフが2つ。

バチバチに開けまくったチャラいとも言えるような人物。

「…名前はなんて言うんですか?」

千冬が敬語を使って聞いている。

千冬は知らない相手には誰であっても敬語を使う。

千里も「そういえば名前知らない!」と言うことに気づいたらしく、後ろでそーだそーだと言う。

日菜子は彼が怖いのか、千里にずっとくっついている。

「あ、わりー。名前言ってなかったな。俺は風柳龍也。お前らの1個上の先輩だぜ。」

1個ということは、2年生か。

そう言えばネクタイの色が違う。

先輩は黄色だった。

「…あ、ボブの君、俺のことは『龍也先輩♡』って呼んでくれて構わないからな!」

千里の片手をきざったく握って、笑う。

まるで舞踏会の姫と王子のようだ。

「絶対嫌ですー!!」

千里はべーっ!と舌をだして反対した。

そんな千里の反応をハハッと明るく笑いながして、話題を変えるように切り出す。

「この制服って1年の色が1番合うよな。」

自分のネクタイを持ちながら言う。

確かに、少し奇抜にも見える。

でもまぁ似合わないことない。

「そうですね〜……じゃないです!!なんで私達を呼んだんですか??」

千里は先輩だと知り、敬語を使って突っ込む。

一応?礼儀を知っている千里である。

千冬も日菜子も頷く。

皆が知りたがっていることだ。

「なんでってそりゃ…」

「「「…………。」」」

ゴクリと唾を飲む千里達。

「そりゃ、マドンナとお近づきになりたいからに決まってるじゃん??」

「「「理由がしょうもなかった!!!」」」

三人揃って突っ込みを入れた。

「しょうもないってなんだよ〜大事なことだろ?可愛い子に目がない男子なんていないぜ?」

パチンと綺麗にウィンクするが、チャラさが増すだけである。

(そ、それだったら千冬くんはどうなるんでしょう…!!?)

どうなる、とは千里が好き(断定はしてない)なのにもし、万が一マドンナに惚れたら…!?と言うことである。

(千里さんも可愛いですけど、もしもの事があったら…いや、でも千冬くんに限って…)

「日菜子どしたの?ずっともんもんしてるけど…」

ハッとした顔で千里の顔を見る日菜子。

その顔を疑問の顔で見る千里。

「…ち、千里さんは私が守りますからね!!」

「あ、ありがとう!?」

突然の『守る宣言』に戸惑いながらも、お礼を言う千里だった。

(…何か千里達盛り上がってる…この場の話は俺が進めておくか…)

後ろをチラッと見て、千冬は決めた。

「それで先輩。俺達にどうして欲しいんですか?」

千冬の一言で、空気が変わった。

(そこまでシリアスではないが。)

先輩は少し悩むような顔をして、やがて口を開いた。

「マドンナと話できるようにしてくれない?…ちょっとで良いからさ!」

パチンと器用にウィンクして見せる。

手も両手を合わせて。

「「「……え、えぇ…??」」」

混乱のような、呆れのような声を三人はだしたのだった。

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