第7話

6話:マドンナ


「なぁ、今日こそ見れるかな?」

「…さぁ?でもこの前も人だかりできてたしな…でも、今日こそ見たいよなぁ。」

そんな雑談しながら通り過ぎる生徒を見て、千里は首を傾げる。

「今のなんの話しだろうね?そんな人気なもの、この学校にあったっけ…」

「…俺も思い当たらない。」

千冬も男子生徒を目で追いながら呟く。

「…あ!もしかして1日30食限定のローストビーフ丼のこと!?」

私もまだ食べたことない、と目をキラキラさせる千里。

「だとしたら”見た”って言う表現がおかしいでしょ。」

呆れる千冬。

「…そっかぁ」

しょげる千里に、いちごミルクの飴を渡すと、途端ご機嫌になった。

「…私も良く知りませんが…あ!」

なにか思いついたように日菜子が声を上げた。

「ふぉうしたの?(どうしたの)」

飴を舌で転がしながら千里が尋ねる。

「最近話題になってるんですが、隣のクラスに”マドンナ”がいるそうなんです…!」

「「マドンナ??」」

千里と千冬が同時に首を傾げる。

そうです、と日菜子は大きく頷く。

「…ねぇ、千冬!私…」

最後まで言わず、千冬の袖を少し持って目を輝かせながら、何かを訴えている。

「…はいはい。マドンナが気になるのね。分かった、行こう。」

全て察した千冬は、優しく答える。

そして、でも、と言葉を続けた。

「でも、もう授業が始まるから次の休み時間にね。千里が授業中寝なかったら一緒に見に行こう。」

ちゃっかり千里に授業中寝ないように約束を取り付けている。

お母さん味溢れた千冬である。

千里の保護者とも言える。

「分かった!」

千里は元気いっぱいに答える。

それと同時にチャイムがなって、千里達は慌てて教室まで走った。


***


休み時間。

千里達は再び廊下に来た。

千里は起きていたーーが、少しうたた寝していたとも言うーーので、そのご褒美としてマドンナを見に来た。

「…マドンナ…どんな子なんだろ!気になる〜」

意気揚々と飛び出て、嬉しそうに隣のクラスまで行く。

そして、分かりやすく人だかりができていた。

「あそこみたいだね。」

「そうですね…!見れると良いんですが。」

千冬と日菜子も千里の後ろを着いていく。

千里はクラス前まで来ると人だかりを「すみません!」と言いながら、割って入っていく。

千冬達もそれに続いた。

(千冬が来た時は勝手に道が作られた。女子達が一斉に退いたからである。)

「…おぉ!」

千里の感嘆の声が聞こえる。

「お〜」「…わぁ…!」

千冬と日菜子も声を上げた。

そこには、可愛らしい女の子がいた。

目はぱっちりしていて、髪は直毛の黒髪ロング。

肌も白く艶々で、まるで日本人形のような愛らしさがあった。

着物が良く似合いそうな、そんな美少女。

髪色が落ち着いているからか、少し明るめなこの高校の制服が良く似合っている。

顔の良さもあるだろうが。

「か、可愛い…!」

「だよな、めっちゃ可愛い。」

千里が声を発したのとほぼ同時に隣から声がした。

「「「………誰!??」」」

千里達三人は、混乱の声を上げた。

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