第3話

2話:1年A組


「おはよーございまーす!」

千里が元気良く挨拶し、教室の扉を開ける。

そこにはもう何人も…いや、ほぼ全員が来ていた。

ワイワイとあちこちから賑やかな声が聞こえる。

教室に入ってからすぐ大事な事…それは、友達作りである。

また新たな生活が始まる高校生活。

クラスの人と仲良くなるには始めが大事なのだ。

「…おはよー」

「はよ!」

何人かが千里の挨拶に返事をする。

千里はその人達に話しかけながら、自分の席へ行き、机に鞄を置く。

そして、千冬の元へ行き、千冬の耳元で話す。

内緒話のポーズだ。

千里は、誰にも聞こえないように小さな声で話す。

「…千冬、大丈夫?まずは挨拶!」

その声に千冬は、こくりと頷く。

「…大丈夫。ちゃんと話せるから。」

そう言い、席へ着く。

千冬はクールで無気力。

その上、イケメンである。

唯一の欠点と言えば、情報遅めと言う所か。

そのため、時には失敗する事もあり、幼なじみとして少し心配な千里だった。

まぁ、遅めな所以外は何でもやればできる人なので、大丈夫だと思うが。

(…ま、なんだかんだ言って人付き合い上手いしね。)

千冬を見ながら千里は思う。

そして、

(女子にモテる。たいそうモテる。)

そうだ。

運動神経抜群で勉強もできる。

そして何よりイケメンだ。

幼なじみの千里から見てもイケメンだと思う。

それを飾らない性格も良い奴なので、男子からも人気だ。

だから…

(自動的に食いつくよね。…主に女子が。)

ハハッと呆れ顔で千里は頬杖を付いた。


***


「…HRすっぞー。はよ席につけー。」

ガラガラと教室の扉が開く。

そして入って来たのはーー

(…ヤンキーだ、ヤンキー。)

(ヤンキー)

(不良)

「…ギャルだ…。」

「…おい、ギャルじゃねーぞコラ。」

クラスの全員がヤンキーだと(心の中で)思った中、千里の声は漏れ出ていた。

それを聞かれ、睨まれる。

目つきの鋭い目、長い少し巻いた金髪の髪。

髪は頭の高い位置で結んでいる。

そして似つかない見た目にアンバランスな眼鏡。

「せめてヤンキーて言え。ヤンキー。」

だるそうに呟きながら教壇へ上がる。

この人本当に先生なのか?と言うほど先生らしくない人だった。

一応スーツ(スカートスーツ)を着ていたので、先生と見分けがつく。

「…えー今日からあんた達の担任になる木藤恐音だ。宜しく。」

(…担任!!)

入学早々、クラス全員の心が一致した瞬間だった。

ヤンキー…先生の話は続く。

「担当教科は社会。2年は倫理もやるぞ。私の担当するモンで赤点なんてとったら容赦しねーからな。」

(…倫理!!ヤンキーが倫理!)

そして何故か先生から脅される。

少し怯えている生徒を木藤は眺める。

そして呆れたように口を開く。

「…お前ら、ヤンキーつってもーー」

キーンコーンカーンコーン

先生が話した途中で、チャイムが鳴る。

これから入学式だ。

すぐ並ばなければいけない。

木藤は途中で言いかけた言葉を飲み込んで…

「…お前ら早く並べよ。入学早々ダラダラすんな。」

そう言い、教室を後にした。

「………。」

教室には、先生の言いかけた言葉の謎が出来てしまった。

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