第54話

After story:きいな 其の二


どーも。皆さんこんにちは。

水面下にいる絶世の美女、鏡峰きいなよ。

私は、とある事情でこの何も無い、ただ見渡す限り水面ばかりの所にいる。

まあ、それは今までの物語を見てきた貴方達なら分かるよね。

それはそうとて…

「…私を忘れすぎじゃないのー!?」

ウガーっと両手を高くあげて心の中の気持ちを吐き出した。

忘れすぎ、と言う場面は沢山ある。

例えば、最終話の2、3話めあたりから。

時間軸的に私、もう盂蘭盆は過ぎてるから消えてるはずなのに、その布線が1つもないし!?

泉だって、皆だって、心配する様子どころか、1つも気づいてないじゃない!

そりゃ、確かに色んなことがあったわよ?

けど、あんな感動的な再会を果たしたんだし、せめてそこの部分を書いたらどうなのかしら!

もー!

せっかく出番が来て、私メインの小話なのにこれじゃ、ただの愚痴じゃない。

ここまで思って、急にふと、冷静になる。

本当に忘れたのかな。

少しだったけど、今まで一緒に過去を乗り越えてきたし、泉に至っては姉

妹。

ずっと一緒にいたのに忘れるはずがない。

忘れられるはずがない。

それは分かっているけど...

今回、このようなこともあって、昔も、ここに来た当初も思っていた計り知れない恐怖と不安がのしかかる。

もし、本当に忘れていたら...

私は、何を支えに生きたらいい?

私は巫。

皆の安泰を守るため、生贄といてこの身を捧げる巫女。

自分から行ったではないか。

今更、何を思う。

自暴自棄になりかけていた時…上から声が降ってきた。

「…泉さんは、きいなさんのこと、その、諦めたんですか?」

おずおずと尋ねる月の声。

「…そんなわけないでしょう。今だってずっと考えているわ。..姉さんを助ける方法を。..誰も犠牲にならない方法を。」

その言葉にハッとする。

下を向き、唇を噛み、弧を描いた。

ふっと笑いが漏れる。

自分がいかに愚かな考えをしていたか、分かったからだ。

泉達はしばらく話していたが、解決策が浮かばなかったのか、ごめんなさいと言って後にした。

結構、長い間話してくれていた。

それだけで、嬉しかった。

「…待ってる。泉。」

顔を綻ばせながら、小さく呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る